出来高の流れを「山と谷」に変えて見せるオシレーター
「Chaikin Fisher Transform Divergence & Early Reversal」は、出来高ベースのオシレーターであるチャイキン・オシレーターに、フィッシャー変換をかけて表示するインジケーターです。チャートの下に専用のパネルが1つ追加されます。
チャイキン・オシレーターは、買い集めと売り抜けの勢いを出来高込みで測る指標です。ただ、そのままだと値の大きさが銘柄ごとにばらばらで、どこからが行き過ぎなのかがつかみにくい面があります。「Chaikin Fisher Transform Divergence & Early Reversal」はそこにフィッシャー変換を重ね、天井と底が尖った、折り返しの分かりやすい波に作り替えています。
役割ごとに分けてみると、出ているものは次の3つだけです。
- Fisherラインが向きを変えた足に出る▲と▼
- 行き過ぎた位置での折り返しに付く◆
- 価格とFisherラインの食い違いを知らせる4種類のラベルと線

この記事では、それぞれの記号がどんな条件で出るのか、どのタイミングで確定するのかを、実際の表示に沿って順番に見ていきます。
パネルに並ぶ線と記号を、ひとつずつ読む
太い線がFisherライン、細いグレーが1本前の値
パネルの主役は太い線のFisherラインです。0以上では緑、0未満では赤で描かれるので、色を見るだけで出来高の勢いが買い寄りか売り寄りかが分かります。図の③のように、0をまたいだ足から先で色が切り替わります。
細いグレーの線はTriggerという名前で、中身はFisherラインの1本前の値です。別の計算をした線ではなく、同じ線を右に1本ずらしただけ。そのため2本が交差する足は、Fisherラインが向きを変えた足と必ず一致します。
Fisherラインの色と▲▼が出る位置
線の色は0を境に切り替わり、線が向きを変えた足にだけ三角が付きます。
Vowars DE ver.3.12.26
▲は図の①のとおり、下がっていたFisherラインが上向きに変わった足で、パネルの下端に出ます。▼はその逆で、図の②のように上端です。線の高さに関係なく上下の端にそろうので、パネルが込み合っても見落としにくい配置です。
水平線は3本あります。破線が0、上の点線がOverbought Level、下の点線がOversold Levelで、初期値はそれぞれ1.5と-1.5です。
記号とラベルの早見表
| 表示 | 名前 | 出る条件 | 位置 |
|---|---|---|---|
| 緑の▲ | Long Crossover | Fisherラインが上向きに変わった足 | 下端 |
| 赤の▼ | Short Crossover | Fisherラインが下向きに変わった足 | 上端 |
| 水色の◆ | Early Bullish Reversal | Oversold Level以下から上向きに変わった足 | 下端 |
| オレンジの◆ | Early Bearish Reversal | Overbought Level以上から下向きに変わった足 | 上端 |
| RegBull(緑・実線) | Regular Bullish Divergence | 安値は切り下げ、Fisherの谷は切り上げ | 下端 |
| HidBull(暗い緑・破線) | Hidden Bullish Divergence | 安値は切り上げ、Fisherの谷は切り下げ | 下端 |
| RegBear(赤・実線) | Regular Bearish Divergence | 高値は切り上げ、Fisherの山は切り下げ | 上端 |
| HidBear(暗い赤・破線) | Hidden Bearish Divergence | 高値は切り下げ、Fisherの山は切り上げ | 上端 |
◆は▲▼より早い?実際に追うと同じ足に出ていた
Early Reversalという名前から、▲▼より先に出る合図を想像していました。公開ページの説明にも、クロスが成立する前に知らせるシグナルだと書かれています。ところがチャートで1つずつ追ってみると、◆は必ず▲か▼と同じ足に重なっていました。
理由は先ほどのTriggerの性質にあります。▲▼が出る条件も◆が出る条件も、どちらも「Fisherラインが向きを変えた足」です。違いは、◆のほうにだけ次の2つの絞り込みが加わる点にあります。
- 折り返す直前の値が、Oversold Level以下、またはOverbought Level以上であること
- 同じ向きの◆が直前に出てから、Signal Cooldown (Bars)で決めた本数以上が経っていること
◆が出るのは±1.5の外側で折り返したときだけ
Early Reversalの◆は、三角と同じ足に重なって表示されます。
Vowars DE ver.3.12.26
図の①は-1.5より下で上向きに変わった足で、▲の上に水色の◆が重なっています。図の②は+1.5より上での折り返しなのでオレンジの◆。一方、図の③は同じく+1.5より上で下向きに変わっていますが、前の◆から2本しか経っていないため▼だけが出ています。
つまり◆は、たくさん出る▲▼のうち、行き過ぎた位置で起きたものだけに色を付けた印として読むのが実態に合っています。出るタイミングは▲▼と同じなので、「◆が出たから先回りできる」という期待はしないほうが安全です。
公開ページではEarly Reversalを「クロスより前に出る先行シグナル」と紹介していますが、実際の表示では▲▼と同じ足に出ます。星評価ではこの食い違いを総合点の調整に反映しました。使い方を誤らなければ、行き過ぎの折り返しを一目で拾える印として十分役に立ちます。
RegとHid、4種類のラベルを読み分ける
ダイバージェンスは、価格とオシレーターの動きが食い違う現象です。「Chaikin Fisher Transform Divergence & Early Reversal」は、Fisherラインの山と谷を自動で見つけ、1つ前の山や谷と比べて食い違いがあればラベルと線を描きます。
RegBullとRegBearは、勢いの息切れを知らせる
RegBullは「安値は切り下げ、Fisherの谷は切り上げ」
比べているのは、Fisherラインの谷が付いた足の安値どうしです。
Vowars DE ver.3.12.26
図の①で価格の安値は前の谷より低くなっています。それなのに図の②のFisherラインの谷は、前より高い位置で止まりました。価格は下げているのに、出来高込みの売りの勢いは弱まっている状態です。このとき谷どうしが図の③の実線で結ばれ、RegBullのラベルが付きます。
RegBearは上下を逆にした形です。高値は更新しているのにFisherラインの山が低くなったときに、赤い実線とラベルが出ます。どちらも流れが弱ってきたサインで、反転の候補として扱います。
HidBullとHidBearは、流れが続く側のサイン
HidBullは「安値は切り上げ、Fisherの谷は深くなる」
RegBullとは条件が逆で、線は破線、ラベルは少し暗い緑になります。
Vowars DE ver.3.12.26
Hidは条件がちょうど逆になります。図の①の安値は前の谷より高いのに、図の②のFisherラインは前より深く沈みました。オシレーターが深く押したわりに価格は崩れていない、という読み方です。線は図の③のように破線で、ラベルの色も少し暗くなります。
HidBullは上昇の途中の押し目、HidBearは下落の途中の戻りで出やすく、流れに沿って入り直す場面の手がかりになります。
比べている相手は「1つ前の山・谷」だけ
読み違えやすい点が2つありました。
1つ目は比較の相手です。比べるのは常に直前の山どうし、谷どうしで、2つ以上前にはさかのぼりません。しかも2つの間隔がMax Bars Between Pivotsの本数、初期値では60本を超えると判定そのものが見送られます。
2つ目は価格の取り方です。比べている安値と高値は、Fisherラインの山や谷が付いた足のものです。ローソク足の見た目上の最安値とは数本ずれることがあり、「チャートでは安値を更新していないのにRegBullが出た」と感じたときは、たいていこのずれが原因でした。
ラベルが付く足と、判定が決まる足は4本ずれる
使い始めていちばん戸惑ったのがここです。過去のチャートを眺めると、ラベルはFisherラインの山や谷のちょうど真上と真下に付いています。ぴったり天底を当てているように見えますが、リアルタイムではその足にラベルは出ません。
ラベルは山の足に付くが、決まるのは4本後
Pivot Right Barsが4のとき、山や谷は右側に4本並んでから確定します。
Vowars DE ver.3.12.26
山や谷として認められるには、左右にPivot Left BarsとPivot Right Barsで決めた本数だけ、それより低い(谷なら高い)足が並ぶ必要があります。初期値はどちらも4です。図の①が山の足で、図の②の4本が右側にそろい、図の③の足が確定した時点で初めてラベルと線が描かれます。描く位置だけが4本さかのぼるわけです。
この動きは一般に言うリペイントとは違います。一度描かれたラベルと線が、あとから消えたり動いたりすることはありません。ただし「過去チャートで見える位置」と「実際に気づける足」に4本の差があることは、検証のときに必ず頭に入れておきたい点です。
まだ確定していない足での動き
▲▼と◆は、その足の終値と出来高を使って計算されます。足が動いている最中は値が変わるので、いったん出た▲が消えたり、また出たりすることがあります。確定した足の記号は変わりません。ダイバージェンスのラベルは足の確定時にだけ判定されるので、途中で出たり消えたりはしません。
TradingViewのバーリプレイを使うと、足を1本ずつ進めながらラベルが何本遅れて現れるかを自分の目で確かめられます。スクロールで過去を眺めるだけでは気づけない差なので、導入前に一度試しておくと感覚がつかめます。さかのぼれる範囲は契約プランと時間足によって変わります。
アラートは8種類
アラートは▲▼の2種類、ダイバージェンスの4種類、◆の2種類の合計8つが用意されています。ダイバージェンスのアラートが鳴るのは判定が決まった足、つまり山や谷から4本後です。▲▼と◆のアラートは、足の途中で条件を満たした時点で鳴らすこともできますが、確定前に消える可能性があるため、アラート作成画面の頻度は足の確定時に1回だけ鳴らす設定を選ぶのが無難です。
設定項目と、数値を動かしたときの変化
設定は4つのグループに分かれています。項目名は設定画面の表記のまま載せます。
| 設定 | 初期値 | 推奨値 | 効果 |
|---|---|---|---|
| Fast Length | 3 | 3 | 蓄積/配分ラインにかける短いほうのEMA期間。小さいほど出来高の変化にすぐ反応する |
| Slow Length | 10 | 10 | 長いほうのEMA期間。大きくすると、より長い流れを基準に勢いを測る |
| Fisher Normalization Length | 10 | 短期足は10〜14、日足は10 | 直近何本の最高値・最安値を基準に波をそろえるか。短いと折り返しが増え、長いとなだらかになる |
| Overbought Level | 1.5 | 1.5〜2.5 | オレンジの◆が出る下限と、上の点線の位置 |
| Oversold Level | -1.5 | -1.5〜-2.5 | 水色の◆が出る上限と、下の点線の位置 |
| Show Divergences | オン | オン | ダイバージェンスの線とラベルの表示 |
| Pivot Left Bars | 4 | 4〜6 | 山・谷と認めるために左側に必要な本数 |
| Pivot Right Bars | 4 | 3〜5 | 右側に必要な本数。ラベルが出るまでの遅れの本数でもある |
| Max Bars Between Pivots | 60 | 60 | 比べる山・谷の間隔の上限。これを超えると判定しない |
| Show Early Reversal Signals | オン | オン | ◆の表示 |
| Signal Cooldown (Bars) | 5 | 5〜10 | 同じ向きの◆を続けて出さない最小の間隔 |
いちばん表情が変わるのはFisher Normalization Length
Fisher Normalization Lengthを5と20で比べる
同じ値動きでも、期間が短いほど折り返しが増えます。
Vowars DE ver.3.12.26
同じ値動きに対して、Fisher Normalization Lengthを5と20で並べました。図の①の5では小さな折り返しまで拾うので▲▼の数が増えます。図の②の20では同じ場面が1つの大きな谷にまとまり、記号はぐっと減りました。
5分足のように細かい時間足では、初期値の10でも▲▼がかなりの頻度で出ます。うるさく感じたら14前後まで延ばすと落ち着きます。逆に日足では10のままでも波が十分に大きく、延ばす必要は感じませんでした。
◆を絞りたいならレベルを広げる
手元のチャートでは、Fisherラインは5分足でも日足でも±3から±4あたりまで振れていました。初期値の±1.5は日常的に超えるので、◆はわりと頻繁に出ます。本当に行き過ぎた場面だけに絞りたいときは、Overbought Levelを2.0から2.5、Oversold Levelを-2.0から-2.5に広げると数が減ります。あわせてSignal Cooldown (Bars)を10ほどに延ばせば、連続した◆も間引けるはずです。
ダイバージェンスの速さと確かさはPivotで決まる
Pivot Right Barsを3に下げるとラベルが1本早く出ますが、小さな山や谷まで拾うので数は増えます。Pivot Left Barsを6に上げると、はっきりした山と谷だけが残ります。早さを取るか、ふるい落としを取るかの選択で、どちらが正しいという話ではありません。まずは初期値の4と4で数日見てから動かすのがおすすめです。
▲▼には専用のオン・オフ項目がありませんが、設定画面のスタイルタブでLong CrossoverとShort Crossoverのチェックを外せば非表示にできます。ダイバージェンスだけを見たいときに便利です。
5分足・1時間足・日足で並べて感じたこと

5分足では、数時間のうちにRegBearやHidBullが次々と並びます。値動きに対してラベルが多く、1つ1つを売買の根拠にするには忙しすぎる印象でした。スキャルピングで使うなら、上位足の向きと同じ側のラベルだけを見るといった絞り込みが欲しくなります。

日足になると、波の1つ1つが数週間単位の値動きと対応してきます。ラベルの数も落ち着き、Fisherラインが-4を下回るところまで沈んだあとの折り返しなどは、価格の底打ちと並べて見やすい形でした。個人的には、1時間足から日足のあたりがいちばん読みやすいと感じています。
銘柄については、出来高がしっかり配信されているものが前提です。暗号資産の現物や先物、株式、ゴールドなどの先物とは相性がよい一方、出来高データを持たない銘柄では計算ができず、チャート上にエラーが表示されます。
EMAで向きを決めてからラベルを拾う
ラベルが4種類もあると、どれを信じるかで迷います。そこで試して良かったのが、移動平均で大きな向きを先に決めてしまう方法です。TradingView標準のEMAを期間50で重ねました。
EMA50で向きを決め、同じ向きのラベルだけを拾う
上昇基調のなかでは、HidBullのほうが値動きと噛み合いやすくなります。
Vowars DE ver.3.12.26
図の①のとおり、価格はEMA50の上で推移しています。この状況で出た図の②のHidBullは基調と同じ向きで、その後に上昇が再開しました。対して図の③のRegBearは基調と逆向きで、下げは一時的な押しにとどまっています。
1 EMA50より上か下かで、買い目線か売り目線かを決める
上なら買い目線、下なら売り目線。EMAをまたいで行き来している間は見送ります。
2 目線と同じ向きのラベルだけを候補にする
買い目線ならHidBullとRegBull、売り目線ならHidBearとRegBearです。逆向きのラベルは、利益確定を考える材料としてだけ使います。
3 ラベルが出た足の確定を待ち、価格の動きで確かめる
ラベルは山や谷から4本遅れて出ます。その時点で価格がすでに大きく進んでいたら見送り、直近の高値や安値を抜くかどうかを確かめてから判断します。
もちろん、この組み合わせでも外れる場面はゼロになりません。強いトレンドではRegBearやRegBullが何度も出ては流されるので、逆向きのラベル単独で反転を決めつけないことが大切です。
頼れる場面と、気をつけたい場面
頼れるところ
- 出来高込みの勢いを、山と谷のはっきりした波で読める
- 0をまたぐと線の色が変わり、買い寄りか売り寄りかが一目で分かる
- ダイバージェンスを4種類とも自動で描き、確定後は動かない
- 行き過ぎた位置での折り返しだけを◆で拾える
- アラートが8種類そろっている
気をつけるところ
- ダイバージェンスのラベルは山や谷から4本遅れて出る
- ◆は▲▼と同じ足に出るので、先回りの合図にはならない
- 短い時間足では▲▼とラベルが多くなりやすい
- 強いトレンド中は逆向きのRegラベルが続けて外れることがある
- 出来高データのない銘柄では表示できない
ダイバージェンスの線は新しいものから50本までが残り、それより古い線は順に消えます。ラベルのほうは残るので、過去にさかのぼるとラベルだけあって線がない箇所が出てきます。不具合ではなく、TradingViewが描画できる線の本数に上限があるためです。
また、「Chaikin Fisher Transform Divergence & Early Reversal」が示すのはあくまで出来高の勢いと価格の食い違いです。単体で売買を決めるのではなく、トレンドの向きや節目の価格と合わせて判断する使い方が前提になります。過去のチャートで当たって見える場面も、4本の遅れを差し引くと印象が変わることがありました。
出来高の波を、折り返しの位置で読みたい人へ
画像「Chaikin Fisher Transform Divergence & Early Reversal」は、チャイキン・オシレーターの読みにくさをフィッシャー変換で補い、折り返しと食い違いを記号でまとめて見せてくれるインジケーターです。押さえておきたいのは次の3点でした。
- ▲▼はFisherラインの向きが変わった足、◆はそのうち行き過ぎた位置のもの
- ラベルは山や谷の足に描かれるが、出るのはPivot Right Barsの本数だけ後
- Regは息切れ、Hidは継続。大きな向きを別のインジケーターで決めてから拾うと迷いにくい
出来高を使ったオシレーターを探している人や、ダイバージェンスを手で引く作業を減らしたい人には、試してみる理由が十分にあります。まずは1時間足か日足に表示して、ラベルが出た足と価格の動きを見比べるところから始めてみてください。








