いまのビットコインは「床」からどれだけ浮いているのか
「BTC Power-Law Ladder」は、ビットコインの日足の終値が「過去の安値の下限をなぞった線」の何倍の位置にあるかを測り、その倍率を5つの段に振り分けて見せるインジケーターです。正式名は「BTC Power-Law Ladder (Point-in-Time)」で、チャート上には「PIT Ladder」と表示されます。作者は RWCS_LTD で、オープンソースとして公開されています。
答えてくれる問いは、ひとつだけ。「いまの価格は、歴史的に支えられてきた床からどれくらい上に伸びているか」。売買のタイミングを教えるものではなく、作者自身も「リスクの枠組みを考えるためのツールで、エントリーシグナルでも投資助言でもない」と明記しています。

私は2026年9月25日にBinanceのBTCUSDT日足へ入れてみました。右下の表に出た結果は「cheap」「1.169x」。線の1.17倍、つまり5段のうち下から2番目にいる、という読み取りです。日々の値動きを見ていると「最高値から3割以上も下げた」という印象ばかりが強くなりますが、「BTC Power-Law Ladder」の物差しで見ると、長い目では安い側に寄った位置だとわかります。この「見え方の切り替え」が、使ってみていちばん面白かったところでした。
「BTC Power-Law Ladder」は、価格の「伸びすぎ具合」を測るための分析用インジケーターです。表示される cut と restore の印も、作者は「根拠が足りない段階のルールを、弱点ごと見えるように公開したもの」と位置づけています。売買の合図として使う前提では作られていないことを、最初に押さえておいてください。
チャートに並ぶ4本の線と、5つの段
灰色の太線は「過去の安値の下限」をなぞるパワーロー線
いちばん下の灰色の太線がトレンドラインです。式は「線の価格 = 10のa乗 × dのb乗」で、dはビットコインのジェネシスブロック(最初のブロック)が作られた2009年1月3日からの経過日数です。価格と日数をどちらも対数にすると、ビットコインの長期推移はおおむね直線に並びます。この性質を使う考え方がパワーロー(べき乗則)モデルで、暗号資産の長期分析ではよく知られています。
このインジケーター「BTC Power-Law Ladder」が一般的なパワーロー線と違うのは、線を引く位置です。多くの図は値動きの「真ん中」を通る線を引きますが、このインジケーターは分位点回帰という手法で、分布の下位1%をなぞる線を求めています。ほぼすべての日の終値がこの線より上にあった、という意味の「床」です。2026年9月25日の日足では、この線は72,070.66ドルでした。
1.6倍・2.5倍・4倍の線で、価格帯を5段に分ける
トレンドラインの上には、1.6倍・2.5倍・4倍の位置に細い線が引かれます。終値を線の価格で割った倍率が、どの線の間にあるかで段が決まり、段ごとに背景の色が変わります。cheap は図の①、mid は図の②、rich は図の③の範囲です。
価格がトレンドラインの何倍にいるかで、背景が段ごとに色分けされる
線は下から1.0倍(トレンドライン)、1.6倍、2.5倍、4倍。終値がどの間にあるかで背景の色が決まります。
- トレンドライン
- 1.6倍の線
- 2.5倍の線
- 4倍の線
Vowars DE ver.3.11.2
| 段(表の表示名) | 倍率 | 背景の色 | どんな位置か |
|---|---|---|---|
| below the line | 1.0倍未満 | 濃い緑 | 床の線そのものを割り込んでいる |
| cheap | 1.0〜1.6倍 | 緑 | 床のすぐ上。長い目では安い側 |
| mid | 1.6〜2.5倍 | グレー | 中間。cut も restore も起きない帯 |
| rich | 2.5〜4.0倍 | オレンジ | 床から大きく離れた位置 |
| very rich | 4.0倍以上 | 赤 | 過熱。作者の集計では翌年の大幅下落が多い |
境目の1.0・1.6・2.5・4.0は固定です。設定では動かせません。作者が段ごとの成績を、ちょうどこの4つの値で集計しているためです。境目を動かせるようにすると、集計されていない区切りに同じ名前が付いてしまいます。数字の意味を守るための固定だと理解すると、納得がいきます。
対数スケールにしないと、上の段が読めない
正直に書くと、私は最初、価格スケールを通常のまま表示していました。するとビットコインの価格が小さかった2018〜2020年のあたりでは線がほぼ重なり、最近の年では4倍の線が画面の上へ飛んでいきます。段の幅が年によってまるで違って見えるので、「いまどの段か」が直感でつかめません。
作者も対数スケールでの使用を前提にしています。価格スケールを右クリックして「対数」を選ぶか、Windowsなら Alt+L(Macは Option+L)で切り替えられます。対数にすると、1.0倍・1.6倍・2.5倍・4倍の線がほぼ等間隔の平行線になり、段の読み取りがぐっと楽になります。図解も対数スケールで表示した状態を再現しています。
背景の色、灰色の帯、半減期の縦帯
背景の色はかなり淡い。透明度92%で塗られています。最初は気づかないくらいですが、段が切り替わった日を境に色味が変わるので、長い期間を表示すると「どの段に何か月いたか」が帯として見えてきます。
1.6倍と2.5倍の線の間には、うっすらと灰色の帯が敷かれます。後で説明する cut と restore のどちらも起きない「様子見の帯」です。さらに、2016年・2020年・2024年の半減期の足には灰色の縦帯が入ります。2028年と2032年の半減期も予定日で登録されていますが、ブロックの生成速度から見積もった日付なので、実際とはずれる可能性があります。
後知恵の線を使わない「Point-in-Time」という設計
いちばんの特徴は、名前にある「Point-in-Time(その時点で)」の部分です。ここを理解すると、「BTC Power-Law Ladder」を信用してよい範囲が見えてきます。
ネットでよく見るパワーロー線の多くは、全期間のデータで一度だけ係数を決め、その線を過去にさかのぼって引いています。2017年や2021年の天井を知ったうえで引いた線なので、過去の天井や底にきれいに当たって見えるのは当然です。作者はこれを「どのサイクルがどう終わったかを知っている線」と表現しています。
こちらは、毎年1月にその前年末までのデータだけで線を引き直し、その年はその係数で描きます。2016年の線は2015年12月31日まで、2020年の線は2019年12月31日までのデータしか使っていません。チャートのどの位置の線も、その時点より後の値動きを知らない、ということです。保存されている年版は2014年から2026年までの13本で、そのため初期設定の線は2014年1月1日から始まります。
1月は21本かけて、新しい年版へ線を移す
年が変わるたびに係数を切り替えると、値動きと関係なく線が一晩で動いてしまいます。2016年版は2015年版より43%も低い位置にあり、そのまま切り替えると倍率が一晩で77%跳ね上がる計算です。これだけで cut や restore が出かねません。
そこで「BTC Power-Law Ladder」は、1月の最初の21本をかけて古い線から新しい線へ少しずつ移します(図の①〜図の②)。1月1日の時点で新旧どちらの係数もすでに確定しているので、この移行に未来のデータは使われていません。対数スケールでは、線は旧年版から新年版へまっすぐ歩くように移ります。
年が変わると、線は21本かけて新しい年版へ移る
2022年版から2023年版へ移る年末年始の再現です。4本の線がそろって、なめらかに下へ移っていきます。
Vowars DE ver.3.11.2
実際の2023年1月がちょうどこの形でした。2023年版の線は2022年版より約19%低く、年末に線の下にいた価格は、1月の上昇と線の低下が重なって cheap に戻っています。図の③の破線は、January blend length (bars)を1にしたときの線です。この場合、年明け最初の足ではまだ旧年版のままで、2本目の足で一気に下がります。
移行の途中は、右下の表の「line vintage」の欄が「2022 to 2023 (5/21)」のように橙色で表示され、いま何本目まで移ったかがわかります。
2027年1月からは「暫定」の線になる
保存されている最新の係数は2026年版です。2027年以降は、2026年9月16日までのデータで引いた暫定の係数が使われ、表の「line vintage」には橙色で「2027 provisional」と出ます。正式な2027年版ができたら差し替える予定だそうです。
私が計算してみたところ、2027年1月1日時点で暫定の線は2026年版の線より約6%低くなります。1月の21本をかけて線が6%ほど下がるので、価格が動かなくても倍率はそのぶん上がります。2027年1月に段が変わったときは、まず線の移行が原因でないかを確かめるとよさそうです(2026年9月25日時点の係数で計算)。
作者は、年ごとの引き直しで消せるのは「係数の後知恵」だけだと認めています。「下位1%の分位点で、対数同士のパワーローを当てはめる」という方法そのものは、ビットコインの歴史を見た人が選んだものです。2014年の時点でこの方法が選ばれていたわけではありません。「BTC Power-Law Ladder」の線は後出しの係数を使っていませんが、過去のチャートで当たって見えることを、そのまま未来の保証と受け取るのは危険です。
cut と restore は、2.5倍で身構えて1.6倍で戻す仕組み
「BTC Power-Law Ladder」には、倍率に応じて「cut(リスクを減らす)」と「restore(元の保有に戻す)」の印を出す機能があります。ルールは単純で、終値が線の2.5倍を上回ったら cut、1.6倍を下回ったら restore です(図の①・図の③)。
要は、上げの判定と下げの判定で基準を分けているところです。cut のあと価格が2.5倍を割り込んでも、1.6倍まで下がらない限り restore は出ません。反対に、2.5倍を行ったり来たりしても2回目の cut は出ません(図の②)。基準を1本にすると、線の近くでもみ合うたびに印が乱発されます。2本の間に灰色の帯を挟むことで、その「行ったり来たり」を無視できるわけです。こうした仕組みはヒステリシスと呼ばれます。
2.5倍で cut、1.6倍で restore。その間では印が出ない
赤い線(2.5倍)を終値で超えると cut、緑の線(1.6倍)を終値で割ると restore。判定は確定した終値だけで行われます。
Vowars DE ver.3.11.2
印は確定した終値でしか出ない
判定に使われるのは確定した足の終値だけです。日足が形成されている途中で2.5倍を一瞬超えても、その日の終値が2.5倍を下回っていれば cut は出ません。印は日足が確定した時点で付き、あとから消えたり動いたりもしません。cut と restore の印はリペイントしないと考えてよいでしょう。
一方、背景の色と右下の表は、形成中の足の現在値で計算されます。日中に価格が大きく動くと、その日の背景色や表の「price / line」は終値が確定するまで変わり続けます。これはTradingViewのインジケーター全般に共通する動きで、確定した足の色が後から塗り替わることはありません。
最初の状態は、チャートの始まりで決まる
初期の状態は、表示できる最初の足の倍率で決まります。最初から2.5倍を超えていれば、cutの印を出さずに「cut 済み」の状態から始めます。BTCUSDTは2017年8月17日から始まり、その日の倍率はおよそ4.0倍でした。そのため私のチャートでは、最初の印が2018年11月のrestoreになっています。
データの始まりが違う銘柄では、序盤の印が変わる可能性があります。作者の公開画像はINDEXのビットコイン指数を使っていて、2014年から判定が始まっています。とはいえ一度restoreを通過すれば、以降の状態はどの銘柄でも同じ倍率の判定で決まるので、差は序盤に限られます。
私のチャートで数えた、9回の印とその後
BTCUSDT日足で、2017年8月から2026年9月25日までに出た印をすべて書き出しました。「その後1年」は、印が出た日から365日の終値の最高値と最安値です。2025年11月のrestoreだけは、2026年9月25日までの約10か月で計算しています。
| 日付 | 印 | 終値(ドル) | 倍率 | その後1年の最高値 | その後1年の最安値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2018/11/24 | restore | 3,932 | 1.59倍 | +233% | −18.3% |
| 2019/5/26 | cut | 8,614 | 2.56倍 | +52.0% | −44.3% |
| 2019/11/24 | restore | 6,903 | 1.54倍 | +170.9% | −30.5% |
| 2020/12/16 | cut | 21,336 | 2.64倍 | +216.5% | 0.0% |
| 2022/6/12 | restore | 26,575 | 1.58倍 | +14.6% | −40.6% |
| 2024/3/11 | cut | 72,078 | 2.58倍 | +47.3% | −25.1% |
| 2024/9/6 | restore | 53,963 | 1.60倍 | +128.5% | 0.0% |
| 2024/11/15 | cut | 91,032 | 2.50倍 | +36.9% | −16.2% |
| 2025/11/21 | restore | 85,129 | 1.60倍 | +13.9% | −31.1% |
並べてみて、考え込んでしまいました。cutのあとも価格はたいてい上がり続け、2020年12月のcutのあとには3倍以上になっています。restoreのあとも、2022年と2025年には3〜4割の下げが待っていました。印を「天井」「底」と読むと、ほとんど外れに見えます。

ただ、これは「BTC Power-Law Ladder」の設計どおりの結果です。cutは「床から伸びすぎたので、大きな下落に巻き込まれたときの傷を浅くしておく」ための印で、天井を当てる印ではありません。作者の検証でも、cutのあとは保有を0.35倍(35%)に減らすだけで、ゼロにはしていません。「伸びすぎの区間では身軽にしておく」くらいの距離感で見るのが、この印とのちょうどいい付き合い方だと感じました。
作者が公開している段ごとの成績を、どう読むか
公開ページには、2014年1月1日から2026年9月16日までの4,642本の日足を使った集計があります。各段にいた日のその後を追ったもので、数字はすべて中央値です。
| 段 | 日数 | 2年後の価格(中央値) | 2年後にプラスだった割合 | 翌1年の最大下落(中央値) | 翌1年に50%超下落した割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1.0倍未満 | 445日 | 9.77倍 | 100% | −30% | 0% |
| 1.0〜1.6倍 | 1,544日 | 4.31倍 | 100% | −30% | 14% |
| 1.6〜2.5倍 | 1,162日 | 2.05倍 | 89% | −49% | 46% |
| 2.5〜4.0倍 | 764日 | 1.60倍 | 76% | −62% | 90% |
| 4.0倍以上 | 727日 | 0.74倍 | 28% | −72% | 97% |
段が上がるほど2年後の成績は悪く、翌年に半値以下まで下げる割合が跳ね上がります。4倍以上の段にいた日は、2年後にプラスだった割合が28%しかありません。倍率という1つの数字で、ここまできれいに差が出るのは印象的です。
cutとrestoreのルールについても、コストを含め、判定の翌日から保有を切り替える条件で検証結果が示されています。
| シャープレシオ | 最大ドローダウン | 最終的な倍率 | |
|---|---|---|---|
| 買って持ち続けた場合 | 0.88 | −83.6% | 101倍 |
| cut と restore に従った場合 | 1.16 | −55.9% | 260倍 |
同じ長さの「市場から離れる期間」をランダムな日付に置いた5,000通りと比べた検定も載っていて、p値はシャープレシオで0.0022、ドローダウンで0.0006、最終倍率で0.0142です。
作者自身が、この結果を「証拠不十分、追跡中(却下はしていない)」と評価しています。理由は次のとおりです。
- 完了した往復は6回だけで、作者が基準にしている30回に遠く届かない
- 2017年の1回だけで、ルール全体の利益の57.9%を占めている。この回は2,258ドルで cut し、3,783ドルで restore しており、その間の67.6%の上昇を取り逃している
- 段ごとの日数は重なりの大きい観測で、倍率の前日との相関は0.997。同じ段に続けていた日は、ほぼ同じ観測を数え直しているのと同じ
- 集計の対象はビットコイン1銘柄、約12年、4サイクル分だけ
表の数字は過去に起きたことの記録で、今後も同じになる保証はありません。作者も「パワーローの床は、破られるまでは守られる。守られる仕組みがあるわけではない」と書いています。
弱点をここまで自分で並べているインジケーターは珍しいと思います。都合のいい数字を並べたうえで、「この結果を信じすぎるな」と自分で書き添えている。私はむしろ、そこに信頼を感じました。
右下の表で「次にどこで何が起きるか」を読む
「BTC Power-Law Ladder」の右下には読み取り表が出ます。英語表記ですが、見るべき場所は3つだけ。今の段と倍率(図の①)、次に印が出る価格(図の②)、現在の状態(図の③)です。
右下の読み取り表で、現在地と次の判定価格がわかる
2026年9月25日(BTCUSDT日足)に表示された表をそのまま写しています。
Vowars DE ver.3.11.2
| 表の行 | 表示の意味 |
|---|---|
| BTC Valuation Ladder | いまの段の名前。段の色で表示 |
| price / line | 終値がトレンドラインの何倍か |
| trend line | 今日のトレンドラインの価格 |
| line vintage | 何年版の線か。1月の移行中と2027年以降の暫定の線は橙色 |
| de-risk at | この価格を終値で超えると cut の判定(線 × 2.5) |
| restore at | この価格を終値で割ると restore の判定(線 × 1.6) |
| state | full exposure(通常)か DE-RISKED(cut 後)か |
| days to halving | 次の半減期までの日数。(est.) は予定日から数えた推定 |
| 1-yr low today | 今日の終値が1年安値圏なら yes |
私がいちばん使うのは「de-risk at」と「restore at」の2行です。2026年9月25日の時点では、cutの判定価格が180,176.66ドル、restoreの判定価格が115,313.06ドルでした。状態はfull exposureなので、次に意味を持つのは上の180,176.66ドルだけです。線は毎日わずかに上がるため、この2つの価格も少しずつ切り上がっていきます。
表は最新の足の値しか出しませんが、過去の倍率も確認できます。「BTC Power-Law Ladder」は「price / line」をデータウィンドウにだけ出力しているので、右側のパネルでデータウィンドウを開き、チャート上でカーソルを合わせれば、その日の倍率が読めます。「2021年の天井では何倍だったか」を確かめたいときに便利でした。私のBTCUSDTでは、2021年の最大は3月13日の6.78倍でした。
青い点は「1年でいちばん安い終値」の合図
ローソク足の下に付く青い点は、終値が直近365本の終値の最安値(0.1%以内)にある日を示します。下落が続く局面では、図の①のように点が連なります。ビットコインは土日も取引されるので365本はちょうど1年です。
1年安値の青い点と、トレンドライン割れは別々に出る
青い点は「過去365本で最も安い終値(0.1%以内)」の足。トレンドラインを割るかどうかとは別に判定されます。
Vowars DE ver.3.11.2
この点とトレンドライン割れは、別々に判定されます。図の②のように1年安値の更新と線割れが重なることもあれば、図の③のように、すでに底を打った後に線を割り、点が出ないこともあります。私の BTCUSDT では、2022年6月から11月、2026年2月と6月に点がまとまって出ていました。線を割ったのは2020年3月、2022年11月から2023年1月、2026年6月から8月でした。けっこう割るんです。

青い点も、形成中の足の終値で判定されます。日中に安値を更新すると点が現れ、その後に戻せば終値の確定とともに消えることがあります。確定した足で判断するようにしてください。
アラートは5種類。印の数とは合わないことがある
「BTC Power-Law Ladder」には5つのアラート条件が用意されています。アラート作成画面の「条件」で「BTC Power-Law Ladder」を選ぶと、次の名前で表示されます。
- Crossed above the de-risk level 倍率がDe-risk aboveの値を上抜けた
- Crossed below the restore level 倍率がRestore belowの値を下抜けた
- Fell below the trend line 終値がトレンドラインを割った
- Reclaimed the trend line 終値がトレンドラインを回復した
- New trailing 1-year low 1年安値圏に入った(連続した日の初日だけ)
ここで注意したいのが、アラートは cut と restore の「状態」を見ていないことです。倍率が線を越えたかどうかだけで判定するため、2.5倍の前後でもみ合うと、上抜けのアラートが何度も届きます。cut の印は1回なのに、上抜けのアラートは3回届いています(図の①)。1.6倍付近でも同じで、restore の印が出た直後にもう一度アラートが届くことがあります(図の②)。
アラートは線を越えるたびに届き、cut と restore の印とは数が合わない
白い菱形は「バーの終値ごとに1回」でアラートを設定したときに届く足です(チャートには表示されません)。
Vowars DE ver.3.11.2
アラートの頻度は「バーの終値ごとに1回」を選んでください。「バーごとに1回」にすると、日足の途中で一瞬越えただけでも届き、印の判定とずれます。もうひとつ、TradingViewのアラートは作成したときの設定のまま動きます。あとでDe-risk aboveなどを変えたら、アラートも作り直しが必要です。
設定項目と、動かすときの考え方
設定は「Trend line」「Rungs」「Markers」の3つのグループに分かれています。基本は初期値のままで使い、表示を整えたいときだけ触る、という付き合い方で困りませんでした。
| 設定 | 初期値 | 推奨値 | 効果 |
|---|---|---|---|
| Line | Real-time (refit each January) | Real-time (refit each January) | 線の作り方。年版の線、全期間で決めた定数、自分で入れた係数から選ぶ |
| January blend length (bars) | 21 | 21 | 1月に新しい年版へ移るまでの本数(1〜90)。1なら年明け2本目で即時に切り替え |
| Custom a (log10 intercept) | -17.516 | 変更不要 | Custom 選択時の係数a(切片) |
| Custom b (exponent) | 5.880 | 変更不要 | Custom 選択時の係数b(指数) |
| Show rung boundaries | オン | オン | 1.6倍・2.5倍・4倍の境目の線を表示 |
| Tint background by rung | オン | オン | 段ごとに背景を色分け |
| De-risk above | 2.5 | 2.5 | cut を判定する倍率(下限1.1) |
| Restore below | 1.6 | 1.6 | restore を判定する倍率(下限0.5) |
| Mark trailing 1-year lows | オン | オン | 1年安値の青い点を表示 |
| Mark de-risk / restore transitions | オン | オン | cut と restore の三角を表示 |
| Mark halvings | オン | 好みで | 半減期の足に灰色の縦帯を表示 |
| Show readout table | オン | オン | 右下の読み取り表を表示 |
| Table Position | Bottom Right | 好みで | 表の位置を四隅から選ぶ |
| Table Size | Normal | 好みで | 表の文字の大きさ(Tiny/Small/Normal/Large) |
Line は3つのモードを見比べると理解が深まる
| モード | 線の作り方 | 線が始まる日 | 1月の移行 | 2026/9/25の線 |
|---|---|---|---|---|
| Real-time (refit each January) | その年の1月までのデータで引いた年版 | 2014/1/1 | あり | 72,070.66ドル |
| Published constants | 広く引用されている全期間の定数(a=−17.516、b=5.880) | 2010/7/17 | なし | 約78,288ドル(筆者計算) |
| Custom | Custom a と Custom b に入れた係数 | 2010/7/17 | なし | 入力した係数しだい |
Published constantsに切り替えると、線はなめらかな1本の曲線になり、2026年9月25日の時点ではReal-time (refit each January)より9%ほど高い位置に来ます。そのぶん倍率は低く出て、段の判定も変わります。私は普段は初期値のまま使い、「後知恵の線だとどう見えるか」を確かめたいときだけ切り替えています。Customは、別のパワーローの係数を自分で試したい人向けです。
De-risk above と Restore below は、動かすと「検証外」になる
De-risk aboveとRestore belowを動かすと、cut と restore の判定位置が変わり、チャート上の赤と緑の線も一緒に動きます。ただし段の境目(1.6倍・2.5倍・4倍の細い線)は動きません。初期値から外すと、表の最下行に橙色で「⚠ thresholds off tested 2.5 / 1.6」と出ます。作者が検証した組み合わせから外れている、という注意書きです。
Restore belowをDe-risk aboveと同じか、それより大きくすると、インジケーターはエラーを出して止まります。2つの間に帯がないと、毎日 cut と restore を繰り返してしまうためです。値を変えるときは、必ずRestore belowのほうを小さくしてください。
私の考えとしては、この2つは初期値のままをおすすめします。作者の集計はすべて2.5と1.6で計算されていて、値を変えた瞬間に、上で見た成績表は参考になりません。「自分のリスク許容度に合わせたい」なら、判定の線は動かさず、cut が出たときに減らす量を自分で決めるほうが筋がいいと思います。
January blend length は21のままでいい
January blend length (bars)は1〜90の範囲で変えられます。1にすると線が年明けに段差を作り、倍率が一晩で跳ねます(図の③)。大きくするほど移行はなだらかになりますが、そのぶん旧年版の線が長く残ります。1月の3週間で移り終える21は、段差をなくしつつ新しい年版を早く反映する、ほどよい値でした。
画面が込み合うと感じたら、Mark halvingsとTint background by rungをオフにするのが効果的でした。境目の線と右下の表さえ残っていれば、段は読み取れます。表が他のインジケーターと重なるときは、Table Positionを「Top Left」などへ移し、Table Sizeを「Small」にすると邪魔になりません。cut と restore の印と、de-risk at と restore at の2行だけは残しておくのがおすすめです。
導入から最初の読み取りまで
1ビットコインのドル建て日足を開く
BTCUSD や BTCUSDT のような、ドル(またはドル連動のステーブルコイン)建てのチャートを開き、時間足を日足にします。線はドル建ての価格で当てはめられているので、円建ての BTCJPY では倍率が正しく出ません。
2インジケーターを追加して、対数スケールに切り替える
インジケーターの検索で「BTC Power-Law Ladder」と入力して追加し、Alt+L(Macは Option+L)で対数スケールに切り替えます。
3表の3か所を見る
右下の表で、段の名前と倍率、de-risk at と restore at、state の3か所を確認します。これで「いまどこにいて、次に何が起きるとしたらどの価格か」がわかります。
4過去の印を確かめる
チャートを縮小して、過去の cut と restore の位置と、その後の値動きを眺めます。日足のバーリプレイは無料プランでも使えるので、過去の日付から1本ずつ進めると、当時この線がどう見えていたかも追体験できます。Point-in-Time の線なので、リプレイ中に見える線も当時と同じです。
使ってみて頼れたところ、気をつけたいところ
頼れたところ
- 「いまは長い目で見て安いのか高いのか」を、倍率という1つの数字で即答してくれる
- 年ごとの係数で線を引くので、後知恵の線にありがちな「過去に当たりすぎる」見え方を避けられる
- 1月の移行処理のおかげで、係数の切り替えだけで段が変わることがない
- cut と restore は確定した終値だけで判定され、印が描き換わらない
- 次の判定価格が表に出るので、事前にアラートや計画を用意しやすい
- 作者が成績の数字と弱点の両方を開示しており、信じてよい範囲が読み取れる
気をつけたいところ
- ビットコインのドル建て日足でしか意味を持たない。円建てや他の銘柄では倍率がずれる
- 対数スケールにしないと、上の段が読みにくい
- cut のあとも上昇が続き、restore のあとも下落が続くことが多く、売買のタイミングには使えない
- 背景の色が淡く、段の切り替わりを色だけで追うのは難しい
- アラートは状態を見ないため、印より多く届くことがある
- 2027年以降は暫定の係数になり、作者の更新しだいで線の位置が変わる
200日移動平均線と重ねて、restore の「その後」を補う
「BTC Power-Law Ladder」と組み合わせるなら、私は200日単純移動平均線をいちばんに推します。「BTC Power-Law Ladder」が教えてくれるのは「床からどれだけ離れているか」という位置だけで、価格がいま上向きか下向きかは教えてくれません。その欠けている「向き」を、長期トレンドの定番である200日線で補う組み合わせです。
特に効くのが restore の場面です。上の表のとおり、restore はたいてい下落の途中で出ます。restore が出た時点で価格が200日線の下にあるなら(図の①)、まだ下げの流れの中です。そこから図の②のようにもう一段下げることも珍しくありません。私は、restore が出ても200日線の下なら買い戻しを急がず、図の③のように終値で200日線を回復するまで待つ、という使い方をしています。
restore の位置を、200日移動平均線で確かめる
青い線が200日単純移動平均線(TradingView標準の「移動平均線」、期間200)です。
Vowars DE ver.3.11.2
200日線は、TradingView標準の「移動平均線」を追加し、期間を200にすれば表示できます。ただし、これは私の使い方で、作者が検証したルールではありません。200日線の回復を待つと下げの途中は避けやすくなりますが、買い戻す価格は高くなります。2024年9月の restore のように、その日がほぼ最安値だったケースでは、待ったぶんだけ高く買うことになりました。どちらを選ぶかは、下落にどこまで耐えられるかで決めてください。
導入前に確かめておきたいこと
日足以外では、線を描かずに理由を表示する

「BTC Power-Law Ladder」は日足専用です。4時間足や週足に切り替えると、線や印は描かれず、チャート中央に赤い文字で「日足専用で、他の時間足では意味を持たない」という英文が表示されます。何も表示されずに「壊れた?」と戸惑うことがないので、親切な作りです。
銘柄は確認されない
時間足とは違い、銘柄のチェックはありません。イーサリアムやゴールドの日足に入れても、警告は出ずにビットコイン用の線と段がそのまま計算されます。当然、その倍率には何の意味もありません。同じ理由で、円建ての BTCJPY に入れると、線がドル建てのままなので倍率が100倍をはるかに超え、ずっと very rich と表示されます。必ずドル建てのビットコインで使うことを覚えておいてください。
「BTC Power-Law Ladder」は、ビットコイン1銘柄の約12年分の値動きから作られた物差しです。過去に段ごとの成績がきれいに分かれていたのは事実ですが、市場の性質は何度も変わってきました。パワーローの床も、いつまでも守られる保証はありません。
cut や restore を見て、全額を一度に売り買いするような使い方は避けてください。暗号資産の取引には大きな損失のリスクがあります。最終的な判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家に相談してください。
どんなトレードに向くか
判定は日足。cut から restore までは数か月から1年以上かかります。数か月から数年の単位でビットコインを保有するポジショントレードや、長めのスイングトレードの「環境認識」に向いています。デイトレードやスキャルピングのエントリー判断には使えません。長期で積み立てている人が、「いまは買い増しに向く位置か」「保有を少し軽くしておく位置か」を月に一度点検する、といった使い方がいちばん合うと感じました。
ビットコインを長く持つ人のための「距離計」として
画像「BTC Power-Law Ladder」は、ビットコインの価格が歴史的な床からどれだけ離れているかを、後知恵を使わない線で測ってくれるインジケーターです。できることは多くありませんが、そのぶん何を測っているのかがはっきりしていて、数字の出どころも弱点も公開されています。
使ってみて何より助かったのは、ニュースやSNSの空気に流されそうなときに、「いまは線の1.17倍、cheap の段」という冷静な数字に戻ってこられることでした。cut や restore の印に売買を任せるのではなく、自分の保有量を見直すきっかけとして置いておく。そんな距離感で使うと、長期保有の心強い物差しになってくれます。








