4つの売買ロジックを1本にまとめ、決済の目安まで描くインジケーター
「Buy-Sell Signals using Multi-Logic Trading System」は、トレンド・モメンタム・レンジブレイク・レンジ内の逆張りという4種類の売買ロジックを1本にまとめたTradingViewのインジケーターです。作者はInvestyourAssetで、オープンソースとして公開されています。
BUYかSELLのマーカーが出ると、その瞬間にエントリー価格・損切り(STOP)・利確目標(TARGET)がセットで描かれます。ここが単なる矢印系シグナルと違うところで、「どこで入って、どこで逃げて、どこで利確するか」までが1画面で完結します。右上にはスコアやフィルターの状態をまとめたダッシュボードも出ます。

私はビットコインの15分足・4時間足・日足にそれぞれ入れて、数日かけて表示を見比べました。使ってみて分かったのは、同じ初期設定でも時間足によって性格がまるで変わることです。この記事では、シグナルの出る仕組みを1つずつほどいたうえで、初期値のままだと困る設定と、その直し方まで書いていきます。
TradingViewの公開ページでは「Buy-Sell Signals using Multi-Logic Trading System」という名前ですが、チャートの左上には「Buy-sell with multi-logic trading system」と表示されます。ダッシュボードの見出しは「IYA · ATS PRO」です。どれも同じインジケーターなので、インジケーター一覧で探すときは「Multi-Logic」で検索すると見つけやすいです。
チャートに出る表示は6種類。まず見方をそろえる
「Buy-Sell Signals using Multi-Logic Trading System」を入れると、情報量の多さに最初はびっくりすると思います。私も最初の数分は、どの線が何なのか分かりませんでした。整理すると、表示は次の6種類に分かれます。
| 表示 | 何を表しているか | 初期状態 |
|---|---|---|
| グラデーションの帯(リボン) | EMA20からEMA200までの位置関係と、トレンドの向き | 表示 |
| 金色のグロー線 | セッションVWAP(その日の出来高加重平均価格) | 表示 |
| 光る丸とBUY・SELLのタグ | 確定したシグナル | 表示 |
| 金色の水平線(エントリービーム) | 保有中のエントリー価格 | 表示 |
| 緑と赤の箱 | TARGETまでの利益側と、STOPまでの損失側 | 表示 |
| 最新足の上のカード | 今の相場を4つの状態のどれと判定しているか | 表示 |
シグナルが出てから決済されるまでの流れを図にまとめました。図の①のように、BUYは足が確定してから点灯します。その足の終値がそのままエントリー価格になり、図の②の位置に金色の線が引かれます。箱は右へ伸び続け、TARGETかSTOPに触れた足の手前で止まります(図の③)。
BUYの点灯から決済までの流れ
シグナルが出ると、エントリー価格・ストップ・ターゲットが1セットで描かれ、どちらかに触れるまで右へ伸び続けます。
Vowars DE ver.3.12.1
箱は決済したあとも消えず、次のシグナルが出た時点で初めて消えます。つまり画面に残る箱は、いつも「いちばん新しいトレード」の1組だけです。過去のトレードを箱ごと振り返りたいなら、表示設定のKeep Historical Risk/Reward Boxes On Chartをオンにします。
リボンの6本の線にEMA50は含まれていない
リボンは6本の細い線と、その間の薄い塗りでできています。私は最初、この6本がEMA20・EMA50・EMA200などの複数の移動平均だと思い込んでいました。実際は違います。
価格側の端がEMA20(図の①)、反対側の端がEMA200(図の②)で、間の4本はEMA20とEMA200の距離を5等分した位置に引いた補助線です。トレンド判定に使われているEMA50は、画面のどこにも描かれていません(図の③)。
リボンの線はEMA20とEMA200を5等分したもの
6本の線は、EMA20からEMA200までを均等に区切った位置に引かれています。EMA50そのものは表示されません。
Vowars DE ver.3.12.1
色は足ごとに3通りに切り替わります。終値>EMA20>EMA50>EMA200の並びがそろうと、価格側が金色で外側が緑の強気カラーに変わります。逆向きにそろえば赤から暗い赤の弱気カラーです。どちらでもなければグレーから紺の中立カラーになります。
ここで注意したいのは、終値がEMA20を1本割っただけで中立色に戻ることです。上昇トレンドの押し目で帯がグレーに変わっても、トレンドが終わったとは限りません。EMA50がどこにあるのかを確かめたい方は、TradingView標準の移動平均(EMA)を期間50で別に重ねておくと判断が楽になります。
金色が3つあるので、線の役割を取り違えやすい
「Buy-Sell Signals using Multi-Logic Trading System」で私がいちばん戸惑ったのは色でした。金色が多すぎるんです。VWAP、エントリービーム、そして強気時のリボンの価格側の線が、どれも同じ系統の金色で描かれます。上昇トレンド中にエントリービームとVWAPが近い価格に来ると、どれがどれだか一瞬分からなくなります。
見分け方は形です。VWAPは値動きに沿って曲がり、1日の始まりで急に位置が変わります。エントリービームは完全な水平線で、保有中だけ表示されます。リボンの金色は、ほかのリボンの線と一緒に帯になって動きます。どうしても紛らわしいときは、スタイル設定から「VWAP Core」や「Entry Beam Core」の色だけを変えておくと、かなり見やすくなります。
相場判定カードとダッシュボードは「最新の足」しか映さない
最新足の上に出るカードは、今の相場を次の4つのどれかに分類した結果です。判定の順番に意味があり、上から順に当てはまったものが表示されます。
| 表示 | 条件 | カードの色 |
|---|---|---|
| BULLISH TREND | 終値>EMA20>EMA50>EMA200 | 緑 |
| BEARISH TREND | 終値<EMA20<EMA50<EMA200 | 赤 |
| RANGE / SIDEWAYS | 直前30本の値幅が、安値に対して5%以内 | 金 |
| TRANSITION | 上のどれにも当てはまらない | グレー |
右上のダッシュボードは12行あります。全部を毎回読む必要はなく、私が実際に目を向けているのは図の①のスコア、②のフィルター、③の勝率の3か所です。
ダッシュボードの12行で読むところ
右上の表は最新の足の状態だけを表示します。過去の足の値は残らないので、見るべき行を絞っておくと迷いません。
表の数値は例示です。
Vowars DE ver.3.12.1
Bull Score・Bear Scoreは、後で説明する6つの条件のうち、いくつがそろっているかを示します。HTF TrendとVWAPは、シグナルに掛かっているフィルターの向きです。ここが赤なら、BUY側のトレンド系シグナルは出ません。
カードとダッシュボードは最新の足の値しか表示せず、チャートをスクロールしても過去の足の判定は出てきません。ただしTradingViewのバーリプレイを使えば、再生を止めた時点が「最新の足」として扱われるので、その時点のカードとダッシュボードを確認できます。気になるシグナルの足でリプレイを止めるのが、いちばん手早い検証方法です。遡れる期間は、プランと時間足によって変わります。
BUY・SELLはどう決まる?4つのロジックと6点スコア
「Buy-Sell Signals using Multi-Logic Trading System」のシグナルは、4つのロジックのうちどれか1つでも条件を満たせば点灯します。どのロジックで出たかはマーカーに書かれません。作者も説明文でこの点を認めていて、判断はカードやダッシュボードと値動きから読み取るように案内しています。
4つのロジックを理解する前に、共通の物差しになっている「スコア」から押さえておきます。
Bull Score・Bear Scoreは6つの条件の合計
| 条件 | Bull Scoreが加算される状態 | Bear Scoreが加算される状態 |
|---|---|---|
| EMAの並び | 終値>EMA20>EMA50>EMA200 | 終値<EMA20<EMA50<EMA200 |
| RSI(14) | 45より上、72より下 | 28より上、55より下 |
| MACD(12・26・9) | MACD線がシグナル線より上で、ヒストグラムがプラス | MACD線がシグナル線より下で、ヒストグラムがマイナス |
| ボリンジャーバンド(20・2) | 終値が中心線より上 | 終値が中心線より下 |
| 出来高とOBV | 出来高が20本平均の1.5倍以上で、OBVが14本平均より上 | 出来高が20本平均の1.5倍以上で、OBVが14本平均より下 |
| 直近高値・安値の更新 | 陽線で、直前10本の高値を終値で上抜け | 陰線で、直前10本の安値を終値で下抜け |
RSIの範囲が「70以上で買われすぎ」のような一般的な使い方と違い、上限の72を超えるとBull Scoreから外れる点は覚えておくと役に立ちます。勢いが付きすぎた足では、かえって点数が下がる作りです。
6番目の条件で使う「直前10本」は、リスク管理のStructure Swing Lookbackの値をそのまま使っています。損切りの位置を調整するつもりでこの値を変えると、スコアの計算まで一緒に変わるので注意してください。
トレンドフォロー型は「並び+スコア+2つのフィルター」
Enable Trend-Following Logicで有効になるロジックです。EMAの並びが完全にそろい、スコアがMinimum Trend Confluence(初期値4)以上で、さらに上位足のEMAとVWAPの向きが合っているときにシグナルが出ます。並び自体がスコアの1点に数えられるので、初期値の4は「並び+ほかの5条件のうち3つ」という意味になります。
4つの中ではいちばん慎重です。そのぶん、トレンドが出て少したってからの点灯になりやすく、初動は取りにいきません。
モメンタム型はEMAの並びを待たずに反応する
Enable Momentum Logicのロジックは、終値がEMA20より上、RSIが52超え、MACDヒストグラムがプラスで前の足より大きい、OBVが平均より上、という勢いの条件で判定します。売り側はRSIが48未満で、ほかは逆です。ここにも上位足とVWAPのフィルターが掛かります。
EMA50とEMA200の並びを待たないので、トレンドフォロー型より早く出ます。私が見た限りでも、レンジを抜けた直後のシグナルはこのロジックによるものが多い印象でした。最初の図解のBUYも、計算上はモメンタム型の条件で点灯しています。
見落としやすいのは出来高です。Use Volume Filter When Availableがオンで出来高のデータがある銘柄では、出来高が20本平均の1.5倍以上ある足でしかモメンタム型のシグナルは出ません。
レンジブレイク型は「直前30本の外で、はっきり引けたか」を見る
Enable Range Breakout Logicのロジックは、直前の30本が値幅5%以内に収まっていたことを前提に、そこを終値で抜けた足を拾います。判定する足そのものを範囲に含めないのがポイントで、図の①の範囲には今の足が入っていません。
レンジブレイクでBUYが出る条件
直前30本でできた値幅を、今の足の終値がATRの0.15倍以上はっきり上抜けたときにブレイクと判定します。
Vowars DE ver.3.12.1
上抜けの基準は「直前30本の高値+ATR×0.15」です(図の②)。高値をわずかに超えただけの足を除くための上乗せで、Breakout Confirmation Buffer (x ATR)で変えられます。さらに、終値がその足の値幅の上側60%以上で引けていること、RSIが50超え、MACD線がシグナル線より上、VWAPより上であることもそろって、初めて図の③のBUYになります。
ここで1つ注意があります。このロジックには上位足のフィルターが掛かりません。上位足が下落トレンドのままでも、レンジを上に抜ければBUYが出ます。作者もこの点を明記していて、上位足の構造は自分で確認するよう書いています。
ブレイク時の出来高を問わないつもりでRequire High Volume For Breakoutをオフにしても、Use Volume Filter When Availableがオンのままなら、1.5倍以上の出来高は引き続き必要です。出来高の条件を外したいなら、両方をオフにする必要があります。
平均回帰型は初期状態でオフ。使うなら出来高の条件に注意
Enable Sideways Mean-Reversion Logicは、レンジの下側20%まで下げて戻した足を買い、上側20%まで上げて戻した足を売るロジックです。下ヒゲが足の値幅の35%以上ある陽線、RSIが38未満から上向きに変わること、レンジ幅がATRの1倍以上あること、などが条件になります。上位足とVWAPのフィルターは掛かりません。
ひとつ引っかかったのは、ここにも出来高の条件が入っていることです。出来高フィルターがオンだと、平均の1.5倍以上の出来高を伴った反発足でしかシグナルが出ません。作者は「出来高が増えながらレンジの端を攻めているときは使わない」と書いているので、出来高の急増を条件にしている点とはやや噛み合っていないように感じました。平均回帰型を試すなら、出来高フィルターの扱いを自分で決めてから使うのがよいと思います。
STOPとTARGETは「直前の安値」と「1.5倍」で決まる
初期設定のStop-Loss Methodは「Structure + ATR」です。BUYの場合、直前10本の最安値を探し(図の①)、そこからATRの0.2倍下にSTOPを置きます(図の②)。TARGETはエントリーからSTOPまでの距離の1.5倍上です(図の③)。
STOPとTARGETの高さはこう決まる
初期設定のStructure + ATRでは、直前の安値の少し下にSTOPを置き、そこまでの距離の1.5倍先にTARGETを置きます。
Vowars DE ver.3.12.1
損切りの位置が直前の安値の少し下なので、値動きの節目に沿った置き方になります。そのかわり、直前の10本が大きく動いていると損切りまでの距離が広がり、TARGETも比例して遠くなります。日足で見ると、この「遠さ」がかなり効いてきます(後で触れます)。
| Stop-Loss Method | STOPの位置 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| Structure + ATR(初期値) | 直前10本の最安値(最高値)からATR×0.2外側 | 節目を意識した裁量トレード |
| ATR | エントリーからATR×1.5 | 値動きの荒い銘柄、損切り幅をそろえたいとき |
| Fixed % | エントリーから2.5% | ボラティリティの変化を気にしない単純な運用 |
Target Methodの初期値は「Risk:Reward」で、Risk:Reward Ratioの1.5倍が掛かります。TARGETの到達とSTOPの到達を1勝・1敗として数えると、勝率40%が損益トントンの境目です(1.5×0.4=1×0.6)。後で紹介するダッシュボードの勝率は、この40%を基準に見ると意味が分かりやすくなります。
保有中はシグナルが止まる。これを知らないと「壊れた?」と思う
「Buy-Sell Signals using Multi-Logic Trading System」の初期設定では、Wait For SL/Target Before Next Signalがオンになっています。STOPかTARGETに触れるまで、次のシグナルを一切受け付けない設定です。逆方向のシグナルも止まります。
保有中は次のシグナルが出ない
初期設定では、STOPかTARGETに触れるまで次のシグナルを受け付けません。その間に条件がそろっても、マーカーは出ません。
Vowars DE ver.3.12.1
図の①でBUYが出たあと、図の②の区間ではBUYとSELLの条件が何度もそろっています。それでもマーカーは出ません。TARGETに触れた足で、ようやく次のシグナルが点灯します(図の③)。
1回ごとに決着を付ける運用なので、検証はしやすくなります。問題は時間足が長いときです。
日足では1つのSELLが8か月近く決着しなかった
ビットコインの日足に入れたとき、2026年2月初めに出たSELLが、9月末になってもまだ保有中の扱いでした。STOPは91,296.91、TARGETは52,480.16と、どちらも現在値からかなり離れています。その間の約8か月、新しいシグナルは1つも出ていません。正直、最初は表示が止まったのかと思いました。
しかも同じ画面のカードは「BULLISH TREND」で、ダッシュボードのTradeは「SHORT」のままです。相場判定とトレード状態が逆を向いているので、初めて見ると混乱すると思います。4時間足でも、6月初めのSELLが8月下旬まで持ち越されていました。

対処は2つあります。1つはWait For SL/Target Before Next Signalをオフにして、新しいシグナルが前のトレードを上書きできるようにする方法です。もう1つはStop-Loss Methodを「ATR」にして、STOPとTARGETの距離をATR基準に縮める方法です。前者はシグナルが増えるかわりに、上書きされたトレードが勝率の集計から外れます。後者のほうが、集計の意味を保ったまま回転を上げられます。
ほかにも3つの「出さない仕組み」がある
- Signal Only When Setup Becomes Fresh(初期値オン)は、条件が「そろっていない」から「そろった」に切り替わった足でだけシグナルを出します。条件が続いている間、毎本出ることはありません
- Minimum Bars Between Signals(初期値5)は、前のシグナルから5本が過ぎるまで次を出しません。6本目から解禁です
- 同じ足でBUYとSELLの両方がそろった場合は、スコアの高いほうだけが出ます。同点ならどちらも出ません
Freshの設定は地味です。でも効きます。トレンドの途中でTARGETに触れても、条件がそろい続けている限り次のBUYは出ません。一度条件が崩れて、もう一度そろうのを待つことになります。
ビットコインの4つの時間足で表示を比べてみた
初期設定のまま、ビットコイン(BTCUSDT)の15分足・1時間足・4時間足・日足に入れて、2026年9月26日時点のダッシュボードを並べました。
| 時間足 | 相場判定カード | Trade | Win Rate(決着した回数) |
|---|---|---|---|
| 15分足 | RANGE / SIDEWAYS | LONG | 46.5%(43回) |
| 1時間足 | RANGE / SIDEWAYS | LONG | 44%(84回) |
| 4時間足 | TRANSITION | FLAT | 45.7%(94回) |
| 日足 | BULLISH TREND | SHORT | 47.5%(40回) |
勝率はどれも44〜48%で、1.5倍のTARGET設定での境目の40%は上回っています。ただし、ここには手数料もスプレッドも入っていません。回数も40〜90回程度なので、「勝てる」と言える材料にはならないと私は考えています。

面白かったのはカードの判定です。15分足では、価格が5日ほどで1万ドル以上動いた週でも「RANGE / SIDEWAYS」でした。レンジの判定は「直前30本の値幅が5%以内」という固定の割合なので、1本あたりの値幅が小さい短い時間足ほどレンジと判定されやすくなります。逆に日足では、30本で5%以内に収まることはめったにありません。

初期値のままだと困る3つの設定
「Buy-Sell Signals using Multi-Logic Trading System」の初期値は、作者の説明にあるプリセットの「5分足・15分足のデイトレード」に近い組み合わせです。4時間足や日足で使うなら、少なくとも次の3つは見直したほうがよいと感じました。
1Higher Timeframeは必ずチャートより長くする
Higher Timeframeの初期値は「60」(1時間)です。これを4時間足や日足にそのまま入れると、上位足のつもりがチャートより短い時間足のEMAを参照することになります。TradingViewの公式ドキュメントでも、チャートより短い時間足をこの方法で取得すると、最後の1本分の値しか返らず、リアルタイムで再現できない描き換えにつながると説明されています。
| チャートの時間足 | Higher Timeframeの目安 |
|---|---|
| 5分足 | 30分または60分 |
| 15分足 | 60分(初期値)または4時間 |
| 1時間足 | 4時間または日足 |
| 4時間足 | 日足または週足 |
| 日足 | 週足 |
この組み合わせは作者の説明文にある目安をもとに、日足の行だけ私が足したものです。上位足を遠くするほどシグナルは減り、近づけるほど増えます。
2日足以上ではVWAPフィルターを外す
VWAPはセッション(ビットコインなら1日)ごとにリセットされる計算なので、日足では1本の足がそのまま1日分になります。するとVWAPはその足の(高値+安値+終値)÷3と同じ値になり、「終値が足の中央より上か下か」を見ているだけのフィルターに変わります。作者も長い時間足ではUse Session VWAP Filterをオフにする選択肢を挙げています。
3Maximum Range Width %は時間足に合わせる
Maximum Range Width %の初期値5%は、ビットコインの15分足にはゆるすぎ、日足には厳しすぎます。30本の値幅はATRの数倍になるのが普通なので、私は「ダッシュボードのATR %の5倍前後」を出発点にしています。2026年9月26日時点のATR %で計算すると、次のようになります。
| 時間足 | ATR %(2026/9/26時点) | Maximum Range Width %の目安 |
|---|---|---|
| 15分足 | 0.19% | 1%前後 |
| 1時間足 | 0.52% | 2.5%前後 |
| 4時間足 | 1.16% | 6%前後 |
| 日足 | 2.94% | 15%前後 |
ATR %は相場の荒さで変わるので、この表の数字は固定値として使わず、ときどきダッシュボードで確かめて見直してください。
パラメーターの全体像と、変えると何が起きるか
設定項目は9つのグループに分かれていて、数は40を超えます。すべてを触る必要はありません。ここでは判定に関わる項目を中心に、初期値と私の推奨値、変えたときの効き方をまとめます。推奨値の欄が「初期値のまま」のものは、変える理由が見当たらなかった項目です。
相場判定・上位足・VWAP
| 設定 | 初期値 | 推奨値 | 効果 |
|---|---|---|---|
| Fast EMA | 20 | 初期値のまま | リボンの価格側の端。小さくすると並びが早くそろい、シグナルも早くなる |
| Medium EMA | 50 | 初期値のまま | 並びの判定だけに使う。画面には表示されない |
| Slow EMA | 200 | 初期値のまま | リボンの外側の端。長期の向きを決める |
| Range Lookback | 30 | 初期値のまま | レンジとみなす範囲の本数。長くするとレンジ判定が減る |
| Maximum Range Width % | 5 | ATR %の5倍前後 | 小さくするとレンジ判定とブレイク型のシグナルが減る |
| Use Higher-Timeframe Trend Filter | オン | オン | オフにするとトレンド型・モメンタム型で、上位足と逆向きのシグナルも出るようになる |
| Higher Timeframe | 60 | チャートより長い時間足 | 上位足EMAの時間足。遠いほどシグナルが減る |
| HTF EMA Length | 50 | 初期値のまま | 上位足のEMAの期間。作者の説明画像では200だが、初期値は50 |
| Use Session VWAP Filter | オン | 日中足はオン、日足以上はオフ | オフにするとVWAPと逆向きのシグナルも出る |
エントリーロジック
| 設定 | 初期値 | 推奨値 | 効果 |
|---|---|---|---|
| Minimum Trend Confluence | 4 | 4〜5 | トレンド型に必要なスコア。5にすると点灯が減り、確度重視になる |
| Enable Trend-Following Logic | オン | オン | トレンド型のオン・オフ |
| Enable Momentum Logic | オン | オン | モメンタム型のオン・オフ。早いシグナルの多くはここから出る |
| Enable Range Breakout Logic | オン | オン | レンジブレイク型のオン・オフ |
| Breakout Confirmation Buffer (x ATR) | 0.15 | 0.15〜0.3 | ブレイクに必要な上乗せ幅。大きくすると浅い抜けを拾わない |
| Breakout Min Close Position In Candle | 0.6 | 0.6〜0.7 | ブレイク足の引け位置。大きいほどヒゲの長い足を除外する |
| Require High Volume For Breakout | オン | オン | ブレイク足に1.5倍以上の出来高を求める |
| Enable Sideways Mean-Reversion Logic | オフ | オフ | 平均回帰型のオン・オフ。トレンド相場では逆張りになるので注意 |
| Mean-Reversion Min Range Width (x ATR) | 1.0 | 1.0〜1.5 | 平均回帰型が使うレンジの最小幅 |
| Mean-Reversion Min Rejection Wick Ratio | 0.35 | 0.35〜0.5 | 反発足に求めるヒゲの長さ |
| Mean-Reversion Require RSI Turning | オン | オン | RSIの向きが変わったことを条件にする |
RSI・MACD・ボリンジャーバンドの期間(RSI Lengthの14、MACDの12・26・9、Bollinger Band Lengthの20と偏差2)も変えられますが、スコアの閾値はRSIの45や72のように固定です。期間を変えるとRSIの分布が変わり、閾値との関係が崩れるので、私は初期値のまま使っています。
出来高・リスク管理・シグナル管理
| 設定 | 初期値 | 推奨値 | 効果 |
|---|---|---|---|
| Use Volume Filter When Available | オン | オン | 出来高データがある銘柄で、モメンタム型などに高出来高を求める |
| Volume MA Length | 20 | 初期値のまま | 出来高の平均を取る本数 |
| High-Volume Multiplier | 1.5 | 1.5〜2.0 | 高出来高とみなす倍率。上げるほどシグナルが減る |
| OBV MA Length | 14 | 初期値のまま | OBVと比べる平均の本数 |
| ATR Length | 14 | 初期値のまま | STOPやブレイク判定に使うATRの期間 |
| Stop-Loss Method | Structure + ATR | 日中足はそのまま、日足はATR | STOPの置き方。ATRにすると距離が一定になる |
| Target Method | Risk:Reward | Risk:Reward | TARGETの置き方 |
| Structure Swing Lookback | 10 | 10〜20 | STOPの基準にする直近安値の範囲。スコアの6番目にも効く |
| Structure ATR Buffer | 0.2 | 0.2〜0.3 | 直近安値からSTOPまでの余白 |
| Stop ATR Multiplier | 1.5 | 1.5 | ATR方式のSTOP距離 |
| Risk:Reward Ratio | 1.5 | 1.5〜2.0 | TARGETの距離。2.0にすると損益トントンの勝率が約33%に下がる |
| Clear Levels After SL/Target Hit | オン | オン | オフにすると決着後も水準が残り、勝率が集計されなくなる |
| Minimum Bars Between Signals | 5 | 3〜5 | シグナルの最低間隔 |
| Signal Only When Setup Becomes Fresh | オン | オン | 条件がそろい直した足でだけ出す |
| Wait For SL/Target Before Next Signal | オン | 日中足はオン、日足はオフも検討 | 決着まで次のシグナルを止める |
| Allow Opposite Signal Before Exit (if wait is OFF) | オン | オン | 待たない設定のとき、逆方向のシグナルで入れ替えるかどうか |
Allow Opposite Signal Before Exit (if wait is OFF)は名前のとおり、Wait For SL/Target Before Next Signalをオフにしたときだけ意味を持ちます。待たない設定では、同じ方向の新しいシグナルは常に前のトレードと入れ替わります。このスイッチで決まるのは、逆方向のシグナルでも入れ替えるかどうかです。
表示まわりの設定は、マーカー・エントリービーム・箱・リボン・VWAP・カード・ダッシュボードをそれぞれ個別に消せます。初期状態でオフのGradient Candle Coloring By Trend Strengthをオンにすると、Bull ScoreとBear Scoreの差でローソク足が緑から赤に塗り分けられます。スコアの推移を過去にさかのぼって眺めたいときに便利です。
用途別の組み合わせ
| 用途 | 変える設定 | ねらい |
|---|---|---|
| 15分足のデイトレード(初期値ベース) | Maximum Range Width %を1%前後に | レンジ判定を実態に近づけ、ブレイク型の乱発を抑える |
| 1時間足〜4時間足のスイング | Higher Timeframeを4時間または日足、Minimum Trend Confluenceを5 | 上位足を正しく参照し、確度の高いシグナルに絞る |
| 日足で大きな流れを追う | Use Session VWAP Filterをオフ、Stop-Loss MethodをATR | 意味の薄いVWAP判定を外し、トレードの回転を上げる |
| ノイズを減らしたい | High-Volume Multiplierを1.7〜2.0、Minimum Bars Between Signalsを8前後 | 出来高の伴わない動きと連続シグナルを減らす |
リペイントとアラートの扱い
「Buy-Sell Signals using Multi-Logic Trading System」のシグナルは、足が確定したときにだけ判定されます。リアルタイムの足の途中でマーカーが出たり消えたりすることはありません。上位足のEMAも、リアルタイムでは確定済みの1本前の値を使う作りです。
ただし細かい点が1つあります。過去チャートでは、上位足が切り替わる直前の最後の1本で、確定したばかりの上位足の値が使われます。リアルタイムではその1本はまだ前の値のままなので、上位足の境目の1本に限って、過去チャートとリアルタイムで判定がずれる可能性があります。影響はごく一部の足ですが、過去チャートのシグナルをそのまま成績とみなさない理由の1つにはなります。
アラートは4種類の条件が用意されています。
| アラート条件 | 内容 | タイミング |
|---|---|---|
| ATS Pro BUY | 確定したBUYシグナル | 足の確定時 |
| ATS Pro SELL | 確定したSELLシグナル | 足の確定時 |
| ATS Pro Stop Hit | 保有中のSTOPに触れた | 足の途中でも触れた時点で条件成立 |
| ATS Pro Target Hit | 保有中のTARGETに触れた | 足の途中でも触れた時点で条件成立 |
このほか、Enable Dynamic alert() Messagesがオンなら、銘柄名・エントリー価格・STOP・TARGETを含んだメッセージも送れます。TradingViewでアラートを作るとき、条件にこのインジケーターを選び、選択肢からalert()関数の呼び出しを指定すると受け取れます。BUYやSELLのたびに損切りと利確の価格が一緒に届くので、スマホで通知を受ける運用とは相性がよいと感じました。
Win Rateは、TARGETに触れたら1勝、STOPに触れたら1敗として数えた値です。手数料やスリッページは入らず、同じ足でTARGETとSTOPの両方に触れた場合は1勝と1敗が両方加算されます。
Wait For SL/Target Before Next Signalをオフにして途中で入れ替わったトレードや、Clear Levels After SL/Target Hitをオフにした場合は集計されません。作者も説明文で、この勝率は内部の簡易統計なので別途検証するよう書いています。
マーカーの数にも上限があります。マーカー1つにつき4つのラベルを使い、ラベルの上限が500なので、古いものから消えて最新の120個ほどが残る計算です。意外と少ないです。
もっと前のシグナルを見たいときは、バーリプレイでその時期まで戻せば、そこまでの計算で描かれたマーカーを確認できます。
相性がいいのはPivot Points Standard。TARGETまでの障害を先に見る
「Buy-Sell Signals using Multi-Logic Trading System」は、シグナルの根拠を幅広く集めている一方で、TARGETまでの間にある水平の節目は見ていません。作者も「次の大きな節目までに十分な値幅があるか」は自分で確かめるよう書いています。そこで組み合わせるなら、TradingView標準のPivot Points Standardがいちばん手軽だと考えています。前日の高値・安値・終値から、その日の節目(P、R1、S1など)を自動で引いてくれるインジケーターです。
Pivot Points Standardを重ねてTARGETまでの道のりを確かめる
「Buy-Sell Signals using Multi-Logic Trading System」は、TARGETの手前にある節目を考慮しません。Pivot Points StandardのR1を重ねると、届くまでの障害が一目で分かります。
Vowars DE ver.3.12.1
図解の場面では、BUYのTARGETよりも手前にR1があります(図の①)。価格はR1の少し手前で上昇が止まり(図の②)、そのままSTOPまで下げました。エントリーの時点でR1が見えていれば、図の③の値幅、つまりR1までの距離を「実際に狙える値幅」として考え、損切りまでの距離と比べて見送る判断ができます。
私が使うときの手順は単純です。
- エントリーからTARGETまでの間に、R1やS1などの線が挟まっていないかを見る
- 挟まっているなら、その線までの距離がSTOPまでの距離より十分に大きいかを確かめる
- 小さいなら見送るか、その線の手前で一部利確する前提で入る
ピボットの計算期間は、Pivot Points Standardの設定で日足・週足などに切り替えられます。1時間足以上で使うなら、週足のピボットに変えたほうが節目として機能しやすい印象でした。
強みと気をつけるところ
頼れるところ
- シグナルと同時にSTOPとTARGETが描かれ、損益の見通しを1画面で持てる
- 4つのロジックとフィルターの状態がダッシュボードに集約され、判断の材料を探しに行かなくて済む
- シグナルは足の確定後にだけ出て、途中で出たり消えたりしない
- 表示やロジックをほぼすべて個別にオン・オフでき、使い方に合わせて削れる
- アラートにエントリー・STOP・TARGETの価格まで載せられる
気をつけるところ
- どのロジックでシグナルが出たかがマーカーから分からない
- Higher Timeframeの初期値が1時間なので、4時間足以上では設定を変えないと上位足として働かない
- レンジ判定が固定の5%なので、時間足や銘柄によって判定が偏る
- 決着まで次のシグナルを止めるため、長い時間足では数か月シグナルが出ないことがある
- VWAP・エントリービーム・リボンの金色が重なり、線を取り違えやすい
向いているのは、出来高データがしっかりある銘柄の日中足です。ビットコインのほか、株価指数の先物や流動性の高い個別株が当てはまります。出来高が取れない銘柄では出来高の条件が自動的に外れるため、シグナルは出ますが、スコアの5番目は常に0点になります。FXのようにデータ提供元によって出来高の意味合いが変わる銘柄では、出来高の条件がどう効いているかをダッシュボードのVolume Ratioで確かめながら使うのがよいと思います。
ロジックを選び分けてこそ生きる、多機能型のシグナル
画像「Buy-Sell Signals using Multi-Logic Trading System」を数日使って、印象がはっきり変わりました。入れておけば勝手に売買を教えてくれるタイプではありません。相場の状態に合わせてロジックとフィルターを選び分けるための枠組みです。作者が説明文の最後で「すべての相場に同じ戦略を当てはめるのではなく、今の相場に合わせて取引する」と書いているのも、この設計を指しています。
初期値のまま15分足で使うと、シグナルの出方もSTOPとTARGETの距離も自然で、まとまりのよい表示になります。一方で4時間足や日足では、上位足・VWAP・レンジ幅の3つを直さないと、フィルターが意図どおりに働きません。設定を触る手間を惜しまない人にとっては、判断材料をまとめて手元に置ける便利なインジケーターです。
シグナルは売買の候補を示すもので、利益を保証するものではありません。ダッシュボードの勝率も簡易的な集計です。実際に使う前に、自分が取引する銘柄と時間足で、バーリプレイを使って1つずつシグナルの前後を確かめることをおすすめします。








