5つの指標を1枚に重ねて、相場の強弱を色の濃さで見る
MACD、RSI、ストキャスティクス、オーサム・オシレーター、アリゲーター。どれもよく知られた指標ですが、全部を別々のペインに並べるとチャートが窮屈になります。「Bias And Sentiment Strength (BASS) Indicator」は、この5つを0ラインを境にした半透明の面に作り替え、1つのペインに重ねて表示するTradingViewのインジケーターです。
面は0ラインより上なら青、下なら赤で塗られます。半透明なので、同じ向きの面が多いほど色が濃くなります。つまり数値を読まなくても、色の濃さで「いくつの指標が同じ方向を向いているか」が分かるわけです。ここに出来高の偏りを示す紫の棒が加わります。

売買サインやアラートは付いていません。相場の方向と勢いをざっと確かめるためのもので、判断は自分で下す前提です。この記事では4時間足を中心に日足と5分足でも表示を見比べ、読み方と設定のコツ、気をつけたい点をまとめました。
ペインに描かれる3種類のもの
「Bias And Sentiment Strength (BASS) Indicator」のペインに出るのは、青と赤の面、紫の棒、そして0ラインの3種類だけです。まずは全体を図で見てください。
BASSの基本表示 青と赤の面、紫の棒
0ラインより上は青、下は赤。面が重なるほど色が濃くなります。
Vowars DE ver.3.12.30
図の①は下落が続いた場面で、赤い面が何枚も重なって濃くなっています。弱気がそろっている状態です。その後図の②で1枚の面が先に0ラインを越えて青に変わり、図の③では青が何層にも重なりました。色が薄いうちは方向がそろっておらず、濃くなるほど足並みがそろったと読めます。
面は5枚、ただし色は2色だけ
重なっている面の中身は次の5つです。どれも元の指標を0ライン中心に作り直してあります。
| 面の名前 | 中身 | 青になる条件 |
|---|---|---|
| MACD Histogram | MACD(12・26・9)のヒストグラムを2倍にしたもの | MACDがシグナルより上 |
| RSI Histogram | RSI(14)から50を引いて5で割ったもの | RSIが50より上 |
| Stochastic Histogram | スローストキャスティクス(21・14・14)の%Kと%Dの差 | %Kが%Dより上 |
| Awesome Oscillator Histogram | オーサム・オシレーター(5・34)に0.6を掛けたもの | 短期の平均が長期の平均より上 |
| Alligator Hunger Histogram | アリゲーターの唇(5)と顎(13)の差 | 唇が顎より上 |
面の名前は設定画面の「スタイル」タブに並ぶ名前です。期間はすべて固定で、設定画面から変える項目はありません。5枚とも同じ青と赤で塗られるため、初期状態ではどの面がどの指標なのかを見分けられない点には注意が必要です。見分けたいときの方法は後半で触れます。
紫の棒は出来高の偏り
紫の棒はVolume Biasという独自の要素で、プラスでもマイナスでも紫のまま描かれます。面とは計算の出どころが違い、出来高を使っているのはこの棒だけです。仕組みは少し先で図にします。
0ラインは黒い線
0ラインは黒で引かれています。暗い背景のチャートではほとんど見えません。面の境目として自然に読めるので困ることは少ないものの、線をはっきりさせたいなら「スタイル」タブの Zero の色を変えておくと見やすくなります。
最初につまずくのは「見えていない面」
ビットコインに表示してしばらく眺めていて、面が3枚しか見当たらないことに気づきました。5枚あるはずなのに、です。原因は面ごとの値の大きさでした。

MACD、オーサム・オシレーター、アリゲーターの面は価格の差から計算されるので、値の大きさは銘柄の価格に比例します。4時間足のビットコインでは、右の目盛りに数百から数千の数字が並びました。一方でRSIの面は最大でもプラスマイナス10、ストキャスティクスの面はさらに小さい値にしかなりません。同じ目盛りに載せると、RSIとストキャスティクスの面は0ラインに張り付いてつぶれてしまいます。
これを直すために用意されているのが、面ごとの倍率です。
価格の高い銘柄でRSIとストキャスティクスの面を表示させる
同じ値動きに対して、上段が初期設定、下段が倍率を上げた状態です。
Vowars DE ver.3.12.30
図の①が初期設定の状態、図の②がRSI ScalingとSlow Stochastic Scalingを上げた状態です。値動きは同じなのに、下段では面が2枚増えているのが分かります。倍率を変えても計算の中身は変わらず、面の高さが掛け算で伸び縮みするだけです。
ドル円やユーロドルのように価格の桁が小さい銘柄では、今度はMACDやオーサム・オシレーターの面のほうが小さくなり、RSIとストキャスティクスばかりが目立ちます。その場合は価格から計算される側の倍率を10倍、100倍と上げてそろえます。考え方は同じで、右の目盛りを見ながら桁を合わせるだけです。
紫の棒 Volume Bias が教えてくれること
Volume Biasの中身は、出来高で重み付けした移動平均(VWMA)から単純移動平均(SMA)を引いた値です。期間はどちらも30本。出来高の多い足が今の平均より高い価格帯に集まっていればプラス、低い価格帯に集まっていればマイナスになります。
紫の棒 Volume Bias の正体はVWMAとSMAの差
オレンジがVWMA、グレーがSMA。どちらも30本で、2本の差が紫の棒になります。
Vowars DE ver.3.12.30
図の①ではVWMAがSMAの下にあり、棒はマイナスです。図の②で2本が交差すると棒がプラスに変わります。面白いのは図の③で、価格は下がっているのに棒はプラスのまま伸びています。高値圏で出来高の大きな足が続いたため、VWMAが高い位置に残っているのです。
つまりVolume Biasは値動きの向きそのものではなく、出来高がどの価格帯に偏っているかを見ています。面と同じ向きなら値動きに出来高の裏付けがあり、逆向きなら裏付けが薄い、という読み方になります。
チャートでの読み方を3つの場面で
1 面と紫がそろっている場面
いちばん素直なのは、青い面が重なり、紫の棒もプラスに伸びている状態です。複数の指標が上を向き、出来高も高い価格帯に寄っています。逆に赤が重なって紫もマイナスなら、下方向で同じことが起きています。順張りで付いていきやすいのはこの場面です。
2 青と赤が上下に分かれる場面
青と赤が上下に同居する場面
急騰のあと、0ラインの上に青、下に赤が同時に出ています。
Vowars DE ver.3.12.30
急騰の直後は図の①のように青一色ですが、勢いが鈍ると図の②のように0ラインの上に青、下に赤が同時に現れます。5枚の面は反応の速さが違い、MACDの面は勢いの変化にいち早く反応する面です。オーサム・オシレーターとアリゲーターの面は水準そのものを見ているので、遅れて付いてきます。その時間差が上下の色分かれとして見えているわけです。
この状態は買いと売りが拮抗しているサインと受け取れます。押し目で終わって青に戻ることもあれば、図の③のように全部が赤へそろうこともあります。どちらに転ぶかは「Bias And Sentiment Strength (BASS) Indicator」だけでは決められないので、色がそろうまで待つのが無難でした。
3 面は青いのに紫が沈む場面
青が残っているのに紫がマイナスへ沈む場面
面の色と紫の棒の向きが食い違うと、上昇の裏付けが薄れているサインになります。
Vowars DE ver.3.12.30
図の①は面も紫もプラスで、出来高を伴って上げています。ところが図の②では、青い面が残っているのに紫の棒だけがマイナスへ沈みました。青い面はそれまでの上昇の名残で消えるのに時間がかかります。先に出来高の偏りが下へ回ったことで、上昇の裏付けが薄れたと読めます。
図では図の③でやがて面も赤に変わりましたが、毎回こうなるとは限りません。新規の買いを控える、利益確定を考え始める、といった程度の目安にとどめるのが現実的です。
設定画面の項目と、銘柄ごとの合わせ方
「Bias And Sentiment Strength (BASS) Indicator」の設定項目は、倍率が6つとVolume Bias用の2つです。設定画面の先頭にある長い英文の欄は倍率の使い方を説明するためのもので、数値を変えても表示には影響しません。
| 設定 | 初期値 | 推奨値 | 効果 |
|---|---|---|---|
| MACD Scaling | 1 | 価格の桁が小さい銘柄で上げる | MACDの面の高さを掛け算で変えます。 |
| RSI Scaling | 1 | 価格の桁が大きい銘柄で上げる | RSIの面の高さを変えます。初期値での振れ幅は最大プラスマイナス10です。 |
| Slow Stochastic Scaling | 1 | 価格の桁が大きい銘柄で上げる | ストキャスティクスの面の高さを変えます。5枚の中で値がいちばん小さい面です。 |
| Awesome Oscillator Scaling | 1 | 価格の桁が小さい銘柄で上げる | オーサム・オシレーターの面の高さを変えます。 |
| Alligator Scaling | 1 | 価格の桁が小さい銘柄で上げる | アリゲーターの面の高さを変えます。 |
| Volume Bias Scaling | 1 | 棒が面に埋もれるときに上げる | 紫の棒の長さを変えます。 |
| Volume Bias Source | hlc3 | hlc3のまま | Volume Bias の計算に使う価格です。 |
| Volume Bias Length | 30 | 20〜50 | Volume Bias の平均期間です。短いほど反応が速く、長いほどなだらかになります。 |
倍率は「右の目盛りの桁」を見て決める
倍率に決まった正解はありません。銘柄の価格だけでなく時間足でも適切な値が変わるからです。同じビットコインでも、5分足では目盛りが数百、4時間足では数千、日足では8,000前後まで広がりました。
目安の出し方は単純で、いちばん大きい面の目盛りと、つぶれている面の値の桁を比べます。4時間足で大きい面が1,000から3,000、RSIの面が5前後なら、RSI Scalingは100から300あたりで釣り合います。ストキャスティクスの面はRSIよりさらに小さいので、Slow Stochastic Scalingはもう一段大きく300から500ほど。5分足なら1桁下げ、日足なら少し上げる、という調整になります。
倍率の下限は0で、0にするとその面の値がすべて0になり、0ラインと重なって見えなくなります。特定の面だけ外したいときは、「スタイル」タブのチェックを外すほうが確実です。チェックを外した面は目盛りの計算からも外れるので、残した面が見やすい大きさに広がります。
Volume Bias Length を動かすなら
Volume Bias Lengthは30本が初期値です。短期売買で反応を速くしたいなら20前後、日足でじっくり見るなら50前後まで延ばす余地があります。短くすると棒の向きが頻繁に入れ替わり、長くすると転換が遅れます。まずは30のまま使い、棒の反転が遅いと感じたときだけ触るくらいで十分でした。Volume Bias Sourceは高値・安値・終値の平均であるhlc3が初期値で、変える理由は特に見当たりませんでした。
どの面がどれか見分けたいとき
5枚とも同じ色なので、慣れないうちは面の正体が分かりません。確かめる方法は2つあります。1つは「スタイル」タブでチェックを1つずつ外し、消えた面を確認する方法。もう1つは、面ごとに色を変えてしまう方法です。たとえば反応の速いMACDの面だけ別の色にしておくと、先行して色が変わる様子を追いやすくなります。
移動平均線と組み合わせて方向を絞る
「Bias And Sentiment Strength (BASS) Indicator」は方向と勢いを見るものなので、価格そのものの位置を教えてくれる指標と相性がいいです。いちばん扱いやすかったのは移動平均線でした。
EMA20とBASSを組み合わせた見方
価格とEMA20の位置関係に、BASSの面の色を重ねて方向を確かめます。
Vowars DE ver.3.12.30
価格がEMA20の下にあって赤が厚い図の①は、買いを見送る局面です。図の②でMACDの面が先に青へ戻りますが、まだ他の面は赤く、価格もEMAの下。ここで飛びつくと早すぎます。図の③まで待つと、価格がEMA20の上に出て、オーサム・オシレーターとアリゲーターの面も青にそろい始めます。
EMAで「価格がどちら側にいるか」を決め、面の色がそろう順番で「勢いが付いてきたか」を確かめる、という役割分担です。期間は20に限らず、普段使っている移動平均線で構いません。
ほかに試す価値があるのは次の組み合わせです。
- ボリンジャーバンド。面がそろって濃くなったときにバンドが広がっていれば、勢いのある動きだと確認できます。
- 水平線やサポート・レジスタンス。色が上下に分かれた場面で、価格が節目のどちら側にいるかを見ると判断しやすくなります。
- 標準の出来高。紫の棒は出来高の偏りしか示さないので、出来高そのものの増減は別に見ておくと安心です。
得意な相場と、読みにくくなる相場
頼れるところ
- 5つの指標の向きを1つのペインで確認でき、チャートを圧迫しません。
- 色の濃さで足並みが分かるので、数値を読まずに状況をつかめます。
- 反応の速い面と遅い面の時間差から、勢いの鈍りに早めに気づけます。
- 紫の棒で出来高の裏付けを同時に確認できます。
- 確定した足の表示があとから変わることはありません。
気をつけるところ
- 初期設定のままだと、銘柄によって一部の面がつぶれて見えません。
- 5枚とも同じ色なので、どの指標の面かは色だけでは区別できません。
- 各指標の期間は固定で、短期向けや長期向けに作り替える設定がありません。
- レンジ相場では面が薄く、青と赤が短い間隔で入れ替わります。
- 面の高さは銘柄や時間足で変わるため、数値を他のチャートと比べられません。
向いているのはトレンドがはっきり出る相場です。面がそろって濃くなり、紫の棒が同じ向きに伸びる、という分かりやすい形になります。時間足は30分足から日足あたりが見やすく、デイトレードやスイングトレードで方向を確認する使い方がしっくりきました。

5分足でも動きますが、面の向きが細かく入れ替わるぶん、色がそろったと思ったらすぐ崩れる場面が増えます。スキャルピングの判断材料にするなら、上位足で方向を見ておくのが前提になりそうです。

使う前に知っておきたい注意点
形成中の足では面が動く
「Bias And Sentiment Strength (BASS) Indicator」の面と棒は、すべて終値をもとにした計算です。確定した足の表示があとから書き換わることはなく、上位足のデータも参照していません。ただし形成中の足では価格が動くたびに面の高さも色も変わります。0ラインをまたいだかどうかは、足が確定してから判断してください。
アラートは自分で作る
アラート条件は用意されていません。ただしTradingViewのアラート作成画面では、条件に「Bias And Sentiment Strength (BASS) Indicator」を選び、面や棒の値が0と交差したときに通知する設定を自分で組めます。たとえば MACD Histogram が0を上抜けたとき、といった指定です。5枚がそろったことをまとめて知らせる条件は用意されていないので、通知はあくまで補助と考えるのがよさそうです。
説明と表示で式の書き方が違う箇所
公開ページの説明では、アリゲーターの面とストキャスティクスの面の式が実際の表示と少し違う書き方になっています。実際の表示は、アリゲーターは唇から顎を引いた値、ストキャスティクスは%Kから%Dを引いた値です。どちらも「短期側が上なら青」という、ほかの面と同じ向きで読めます。
面の高さを「強さの絶対値」と思わない
面の高さは倍率と銘柄、時間足で変わります。昨日より高い、という同じチャート内の比較には使えますが、別の銘柄や別の時間足と高さを比べても意味がありません。また倍率を大きくしすぎた面は、ほかの面を覆って目立ちます。目立つ面が重要というわけではないので、桁をそろえる以上に上げないほうが読み間違いを防げます。
これだけで売買を決めない
色がそろうのは、動きがある程度進んでからです。5つとも過去の価格から計算される指標なので、そろった時点ではすでに値幅が出ていることも珍しくありません。損切りの位置や利確の目安は「Bias And Sentiment Strength (BASS) Indicator」からは出てこないため、価格の節目や移動平均線と合わせて決める必要があります。
相場の空気を一目でつかむための1枚
画像「Bias And Sentiment Strength (BASS) Indicator」は、複数の定番指標を見比べる手間を「色の濃さ」に置き換えてくれるインジケーターです。濃い青なら強気がそろい、濃い赤なら弱気がそろい、上下に分かれていれば拮抗している。この3つを覚えるだけで、チャートを開いた瞬間に相場の様子がつかめます。
使い始めに倍率を合わせるひと手間はかかります。けれども一度そろえてしまえば、5枚の面と紫の棒がそれぞれ違う速さで動く様子が見えてきて、勢いの変わり目に気づきやすくなりました。オシレーターを何本も並べていてチャートが狭いと感じている人は、まず普段の銘柄と時間足で、面がいくつ見えているかを数えるところから試してみてください。







