シグナルマーケット構造

アンカードVWAPの起点選びを自動化するインジケーター「Structure-Anchored VWAP」

アンカードVWAPの起点選びを自動化するインジケーター「Structure-Anchored VWAP」
インジケーター 無料 Structure-Anchored VWAP
このインジケーターの製作者 WillyAlgoTrader
5段階評価で 3.6 難易度 中級
この評価にした理由 Structure-Anchored VWAPは、スイングごとに引き直すアンカードVWAPを土台に、リテストでのエントリーと損切り・利確までを示す売買判断型のインジケーターです。起点選びを自動化しつつ帯や設定を細かく合わせ込める適応性と、波の平均コストをσで測る独自性が評価を押し上げました。一方で、起点の確定に右側の本数ぶんの遅れがあり、確定後にVWAPがさかのぼって描き直されるため、過去チャートでシグナルと曲線の色が食い違って見える可読性の弱さが点数を抑えています。トレンドが続く上位足で波の位置を読みたい人には合いますが、シグナルを単体で機械的に追う使い方を期待すると噛み合いにくいでしょう。
この難易度にした理由 アンカードVWAPとスイングの考え方を知っていれば表示自体は読めますが、このインジケーターを正しく使うには、起点が右側の本数ぶん遅れて確定し、そのたびにVWAPが過去へさかのぼって描き直される仕組みを理解する必要があります。勝率の数え方や、表示されないBand 2でゾーンが判定される点など、表の数字を読み解く前提知識も多いため、中級者向けとしました。

総合評価 3.6/ 5.0

評価基準について

  • 充足性 3.4 作者が掲げた目的を、実際の表示や挙動がどこまで果たしているか。 シグナルに方向・タイミング・損切りと利確がそろい単体で売買を組めますが、前のレッグ由来のシグナルが残り、確認した時間足の勝率は5割前後にとどまりました。
  • 独自性 4.2 既存のインジケーターにない視点・構造・見せ方を持っているか。 スイングに同期した自動アンカーに、レッグ自身の出来高σの帯とVWAPメモリーを組み合わせた構成は、標準の自動アンカードVWAPにない視点です。
  • 可読性 3.0 チャートに入れたときに、意図した情報を誤解なく読み取れるか。 緑と赤の曲線は読みやすい一方、ラベル・SL/TP・大きな表が重なりやすく、描き直し後はシグナルが逆の色の線の下に見えて読み違えが起きます。
  • 適応性 4.3 自分の銘柄・時間足・トレードスタイルに合わせ込めるか。 4つの起点モード、時間足別の目安付きのPivot設定、リスクプリセット、出来高のない銘柄向けの重み付けまであり、調整の勘所がつかみやすいです。
  • 信頼性 3.6 表示されたものを、そのまま信じて判断材料にできるか。 シグナルと判定は確定足だけで行われ安定していますが、起点確定時にVWAPが過去へ描き直される見え方は、注意書きだけでは把握しにくいです。
この記事の要約
どんなインジケーター?
結論

Structure-Anchored VWAPは、確定したスイングごとにアンカードVWAPを自動で引き直し、その波の平均コストとσの距離を示すインジケーターです。リテストシグナルは確定足で固定されますが、起点の確定時にVWAPが過去へさかのぼって描き直される点を理解して使う必要があります。

もっと詳しく
この記事の要点
  • スイングの高値・安値が確定するたびに、そこを起点にVWAPを引き直します。
  • 上昇レッグは緑、下落レッグは赤の曲線と±0.5σの帯で表示されます。
  • VWAPから5本以上離れた価格が戻って触れた足で、Long ▲/Short ▼が出ます。
  • エントリー時にATR基準の損切りと3段階の利確が固定され、TP1到達で損切りが建値へ移ります。
  • 初期値の右側55本ぶん起点の確定が遅れ、確定後にVWAPがさかのぼって描き直されます。
  • そのため過去チャートでは、シグナルが逆の色の曲線の下に見えることがあります。
  • 勝率はTP1に触れた時点で勝ちと数える集計で、Bitcoinの4つの時間足ではおおむね5割前後でした。
  • 時間足に合わせてPivot strengthを下げ、DMIなどで向きを確かめてから使うのがおすすめです。

「Structure-Anchored VWAP」は、波の起点ごとにVWAPを引き直すインジケーター

アンカードVWAPを使ったことがある方なら、「どこを起点にするか」で毎回迷った経験があると思います。直近の安値に置くか、ひとつ前の安値に置くか。相場が進むたびにドラッグし直すのも手間です。

「Structure-Anchored VWAP」(チャート上の表記は「SA-VWAP」)は、この起点選びを自動にしたインジケーターです。スイングの高値・安値が確定するたびに、そこを起点にVWAPを引き直します。上昇の波(レッグ)では緑、下落のレッグでは赤の曲線になり、「今の波に参加した人たちの平均コストがどこにあるか」をいつでもチャート上で確認できます。

TradingViewのStructure-Anchored VWAPをBitcoin日足に表示した例。スイングごとにアンカードVWAPが自動で引き直される。
TradingViewのStructure-Anchored VWAPをBitcoin日足に表示した例。スイングごとにアンカードVWAPが自動で引き直される。

VWAP(出来高加重平均価格)は、出来高の多い価格ほど重く扱って計算する平均値です。アンカードVWAPは、その計算を任意の足から始めたものを指します。「Structure-Anchored VWAP」は計算の始点をスイングに合わせているので、「上昇が始まった安値から見て、今の価格は平均より上か下か」を読むためのインジケーターと考えると分かりやすいと思います。

さらに、VWAPへの押し目・戻りで出るLong ▲/Short ▼のシグナル、ATRで決まる損切り・利確ライン、勝率を集計するダッシュボードまで一通りそろっているのも特徴です。私はBitcoinの週足・日足・1時間足・5分足で表示して確かめましたが、機能が多いぶん、読み方を知らないと誤解しやすい部分もありました。この記事では、その部分も含めて正直に書いていきます。

Structure-Anchored VWAPの基本表示

確定したスイングの高値・安値を起点に、VWAPが自動で引き直されます。

Structure-Anchored VWAPの基本表示SA-VWAPがLLやLHを起点にVWAPを引き直し、上昇は緑、下落は赤の線と帯で表示する様子。Long ▲Long ▲Short ▼Short ▼LHLLLHLLLHHLLLの安値から緑のVWAPが始まるLHの高値を起点に赤のVWAPへ切り替わる線を囲む帯は±0.5σ(Band 1)

Vowars DE ver.3.12.24

Pivot strength を10/10に下げて表示(初期値は55/55)。上昇レッグは緑、下落レッグは赤で描かれ、レッグが切り替わる足で線がつながります。

まずは表示の全体像です。図の①のように、安値がLLとして確定するとそこから緑のVWAPが始まります。図の②では高値がLHとして確定し、その高値を起点に赤のVWAPへ切り替わっています。曲線のまわりの薄い帯は図の③のとおり、そのレッグの出来高で計算した標準偏差(σ)の±0.5倍です。

図解の設定について

記事の図解は、仕組みを見やすくするためにPivot strength leftとrightを10/10に下げて描いています。初期値は55/55なので、実際のチャートではレッグの数がもっと少なく、1本1本が長くなります。

チャートに出てくるものを一つずつ読む

「Structure-Anchored VWAP」は表示する要素が多いので、最初に「どれが何を表しているか」を整理しておきます。ここが曖昧なまま使い始めると、シグナルの意味を取り違えやすくなります。

表示意味色・形
曲線現在のレッグの起点から計算したアンカードVWAP上昇レッグは緑、下落レッグは赤
曲線を囲む帯VWAP±0.5σ(Band 1)。初期設定では±2σのBand 2は非表示曲線と同じ色の薄い塗り
HH・HL・LH・LL・EQH・EQL確定したスイングの種類高値はHHだけ緑でほかは黄色、安値はLLだけ赤でほかは緑
Long ▲/Short ▼VWAPへのリテストでエントリーした足緑と赤のラベル
ENTRY・SL・TP1〜3エントリー価格と損切り・利確の位置青の点線・赤の実線・緑の破線
水平の破線終わったレッグの最後のVWAP値(メモリーレベル)レッグと同じ色の破線
右上の表トレンド・VWAPとの距離・建玉・成績ヘッダーの色がレッグの向きに連動

緑と赤の曲線は「今の波の平均コスト」

曲線の色は、今のレッグがどちら向きかを表しています。上昇レッグは直前の安値、下落レッグは直前の高値が起点です。価格が緑の曲線より上にあれば、その上昇に乗った人の多くが含み益の状態にある、と読めます。

通常のセッションVWAPは日付が変わるとリセットされ、相場の形とは関係なく計算が始まります。「Structure-Anchored VWAP」は計算の始点がスイングなので、日をまたぐ大きな波でも「この波の平均」を追い続けられるのが強みです。私が一番気に入ったのはここで、日足や4時間足で押し目の深さを測るときに使いやすいと感じました。

HH・HL・LH・LLはスイングの「答え合わせ」

ラベルは、確定したスイングが前回と比べて高いか安いかを示します。高値なら前の高値と、安値なら前の安値と比べます。差がATRの0.1倍以内なら、EQH・EQL(ほぼ同値)と表示される仕組みです。

気をつけたいのは、ラベルが付くのはスイングの足から右側の本数ぶん後だという点です。初期値では55本後なので、ラベルは常に「過去の足に後から貼られる」と考えてください。また、高値の後に安値が来て、また高値…と交互に並ぶようにまとめられていて、同じ種類が続いた場合はより極端な方に付け替えられます。

VWAPメモリーは、終わった波が残した節目

終わったレッグが残すVWAPメモリー

レッグの向きが反転すると、終わったレッグの最後のVWAP値が水平の破線として残ります。

終わったレッグが残すVWAPメモリー下落レッグが終わったときのVWAP値が破線の水平線として右へ伸び、価格が触れるまで表示される様子。LHHLHHLLLH赤のレッグが終わった足のVWAP値破線で右へ伸び、価格が触れるまで残る

Vowars DE ver.3.12.24

Pivot strength 10/10で表示。VWAP memory levels は初期値でオン、最大4本まで残り、価格が触れた時点で消えます。

レッグの向きが反転すると、終わったレッグの最後のVWAP値が水平の破線として残ります。図の①が赤のレッグの終点、図の②がそこから右へ伸びる破線です。価格がこの水準に触れると、初期設定では線が消えます。

過去のアンカードVWAPが後から支持線や抵抗線として意識される場面はよくあります。VWAP memory levelsはそれを自動で残してくれる機能で、私は上位足でこの破線に価格が近づいたときの反応を確認する目的で使うことが多いです。触れても消さずに残したい場合はKeep crossed levels (dotted)をオンにすると、薄い点線に変わって残ります。

ダッシュボードは「今の状態」と「これまでの成績」

SA-VWAPのダッシュボード

レッグの状態、建玉、読み込んだ範囲の成績を1枚の表にまとめています。

SA-VWAPのダッシュボードSA-VWAPのダッシュボード。Strength、VWAPからの距離とゾーン、SL・TP、勝率が表示される。Long ▲HLLHHLENTRY 104.73 → SL (BE)SL 100.02 (-4.5%)TP1 ✓ 109.44 (+4.5%)TP2 ✓ 114.15 (+9%)TP3 118.86 (+13.49%)◆ SA-VWAP · Bullish— Market —TrendBullishSignalLONGStrength94 ▰▰▰▰▰▰▰▰Last eventRetest ▲Timeframe60— VWAP —ModeSwing / cumulativeAnchorHL @ 90.57Leg age43 bars · +22.25%VWAP101.94Price vs VWAP+1.41σ +8.62%ZoneFair valueVol above VWAP85% ▰▰▰▰▰▱— Trade —SLBE @ 104.73TP1✓ 109.44TP2✓ 114.15TP3118.86R:R (TP1)1RSL Dist %0%— Stats —Trades1W / L1 / 0Win rate100% ▰▰▰▰▰▰▰▰Form▰Structure-Anchored VWAP · v1.1.04項目を足した0〜100の目安VWAPからの距離と±2σ基準のゾーンBE @ は損切りが建値に移った印TP1に触れたら勝ちと数える勝率

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エントリー中(TP2まで到達、損切りは建値へ移動済み)の表示例。数値は図のローソクで計算したもので、相場によって変わります。

右上の表は4つのセクションに分かれています。項目が多いので、よく見る行だけ挙げておきます。

行表示内容
Trend今のレッグの向き(Bullish/Bearish)
Signal建玉の状態。LONG/SHORT、ポジションがなければWait
Strength出来高の偏り40点、VWAPに対する位置25点、±2σの内側20点、リテスト済み15点を足した0〜100
Anchor/Leg ageレッグの起点の種類と価格、起点からの本数と値動き
Price vs VWAPVWAPからの距離をσと%で表示
Zone+2σより上でPremium、−2σより下でDiscount、その間はFair value
Vol above VWAPレッグ内の出来高のうち、VWAPより上の終値で成立した割合
SL/TP1〜3建玉中の損切りと利確の価格。到達したTPに✓、建値に移った損切りにBE @
Trades/W / L/Win rate読み込んでいる範囲で決済した回数と勝ち負け

図の①のStrengthは、作り手自身が「優位性ではなく状況の目安」と位置付けている数値です。私もこれを売買の根拠にはせず、「レッグの中身がそろっているか」を見る目安として扱っています。図の②のZoneは、Band 2を非表示にしていても±2σで判定されます。チャートに外側の帯がないのにDiscountと出て戸惑ったら、この仕様を思い出してください。

Win rateの「勝ち」は甘めに数えられる

図の③のWin rateは、TP1に一度でも触れたトレードを勝ちとして数えます。TP1到達後に建値まで戻って決済されても勝ちです。逆に、同じ足で損切りとTP1の両方に届いた場合は負けになります。勝率の数字だけを見て判断しないようにしましょう。

出来高データのない銘柄では、計算が時間加重に切り替わり、Vol above VWAPの行名がBars above VWAPに変わります。Modeの行には反映されないので、出来高があるかどうかはこの行名で見分けてください。

Long ▲/Short ▼が出るまでの流れ

シグナルの条件はシンプルです。「レッグの向きに沿って、いったんVWAPから離れた価格が、戻ってきてVWAPに触れたらエントリー」。押し目買い・戻り売りをVWAPで機械的に判定している、と考えれば理解しやすいと思います。順番に見ていきます。

1スイングが確定して、レッグの向きが決まる

初期設定のRe-anchor onはSwingで、スイングが確定するたびに新しいレッグが始まります。高値が確定すれば下落レッグ、安値が確定すれば上昇レッグです。上昇レッグではLong ▲だけ、下落レッグではShort ▼だけが対象になります。

2価格がVWAPから十分に離れる

Long ▲が出るまでの2つの条件

VWAPからいったん離れ、戻ってきて触れた足でシグナルが出ます。

Long ▲が出るまでの2つの条件上昇レッグで価格がVWAPから5本以上離れたあと、VWAPに触れた足でLongシグナルが出る仕組み。Long ▲HLLHHL安値が線+許容幅より上の足が5本以上続く(離れている状態)安値が許容幅(±0.25σ)に届いた足でLong ▲

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Pivot strength 10/10、そのほかは初期値。Bars away before a retest counts 5本、Touch tolerance 0.25σで判定しています。

上昇レッグなら、安値が「VWAP+許容幅」より上にある足を数えます。図の①のように、この状態がBars away before a retest counts(初期値5本)以上続くと、リテストを待つ準備が整います。許容幅はTouch tolerance (x sigma)で決まり、初期値は0.25σです。

3戻ってVWAPに触れた足が確定したらエントリー

図の②のように、安値が許容幅の中まで戻った足が確定するとLong ▲が付きます。下落レッグなら高値で同じ判定をしてShort ▼です。判定は足が確定した時点でだけ行われるので、形成中の足でマーカーが出たり消えたりすることはありません。

また、「Structure-Anchored VWAP」は同時に1つのポジションしか持たない前提で動きます。建玉中にもう一度リテストが起きても、マーカーは付きません。ダッシュボードのLast eventにはRetestと記録されるので、表とチャートの記録が食い違って見えることがあります。もう一点、読み込んだ最初の足から数えて110本(Pivot strength leftとrightの合計。50未満なら50)まではシグナルが出ません。

4損切りと3つの利確ラインが固定される

エントリー後のSL・TPとブレイクイーブン

Long ▲の足の終値を基準に、損切りと3つの利確ラインが固定されます。

エントリー後のSL・TPとブレイクイーブンLongシグナル後にエントリー、SL、TP1〜3のラインが引かれ、TP1到達でSLが建値に移動する様子。Long ▲HLLHHLENTRY 104.73 → SL (BE)SL 100.02 (-4.5%)TP1 ✓ 109.44 (+4.5%)TP2 ✓ 114.15 (+9%)TP3 118.86 (+13.49%)触れたTPは実線になりラベルに✓が付くTP1到達で損切りが建値(BE)へ移動元のSLは薄く残るだけ

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Risk Preset は初期値のBalanced(SL=ATR×1.5、TP1〜3=1R・2R・3R)。TP1に触れたあとは損切りが建値へ移り、ラベルがオレンジに変わります。

エントリーした足の終値を基準に、損切りはATR(ATR Length (SL)、初期値13)の1.5倍、利確はその距離の1倍・2倍・3倍に置かれます。Risk Presetの初期値Balancedの値です。ラインは一度決まると動きません。

TP1に触れると、図の①のようにそのラインが実線に変わり、ラベルに✓が付きます。Break-Even After TP1がオン(初期値)なら、図の②のようにENTRYラベルがオレンジになり、損切りが建値へ移ります。図の③の元のSLラインは薄く残りますが、判定にはもう使われません。TP3か損切り(建値を含む)に届いた時点でトレードが終わり、ラインは次のエントリーまで残ります。

当たり判定は「次の足から」

エントリーした足そのもので損切りやTPに触れても判定されません。判定は次の足以降、しかも足が確定したときだけです。ヒゲで一瞬触れて戻った場合でも、確定した足の高値・安値が届いていれば到達として扱われます。

Structure-Anchored VWAPのブレイクイーブン表示。TP1到達後に損切りが建値へ移動したBitcoin 1時間足の例。
Structure-Anchored VWAPのブレイクイーブン表示。TP1到達後に損切りが建値へ移動したBitcoin 1時間足の例。

いちばん注意したいのは、VWAPが「さかのぼって」描かれること

ここが「Structure-Anchored VWAP」を使ううえで最も大事なポイントです。私も最初は気づかず、日足の過去チャートを眺めて「下落中にLongが出ている、精度が低いな」と首をかしげていました。実際は、シグナルの精度より先に表示の仕組みを理解する必要がありました。

スイングは、右側にrightの本数がそろって初めて確定します。初期値なら55本後です。その間、チャートには前のレッグのVWAPが引かれ続けます。そして高値や安値が確定すると、前のレッグはその起点の足で切られ、新しいレッグのVWAPが55本前の起点までさかのぼって描き直されます。

LH確定の直前に見えている画面

右側の本数がそろうまで、天井はまだ「ただの高値」です。

LH確定の直前に見えている画面LHが確定する前のチャート。緑のVWAPが続き、そこへの押しでLongシグナルが出ている。Long ▲LHLLLHLLのちにLHになる高値。まだ確定していない右側10本がそろうまで待ちの状態緑のレッグへの押しでLong ▲

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Pivot strength 10/10で表示。この時点では緑のレッグが生きており、押し目でLong ▲が出ています。

上はLHが確定する直前の画面です。図の①の高値は、この時点ではまだただの高値で、図の②のように右側の本数がそろうのを待っています。チャート上は緑のレッグが続いているので、図の③の押しではLong ▲が出ます。条件どおりの、正しいシグナルです。

LH確定の直後に描き直された画面

確定した瞬間、赤のVWAPが10本前の高値までさかのぼって描かれます。

LH確定の直後に描き直された画面LHが確定すると、緑のレッグが高値の足で切られ、赤のVWAPが過去にさかのぼって描かれる。Long ▲LHLLLHLLLH10本後にLHとして確定赤のVWAPは高値の足からさかのぼって描かれる残ったLong ▲は赤い線の下に見える

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直前の図からローソクを4本進めた状態。Long ▲の印は消えずに残り、上には赤い線が引かれています。

ローソクを4本進めると画面が変わります。図の①で高値がLHとして確定し、図の②のように赤のVWAPがその高値の足から描かれます。緑の線は高値の足で切られ、図の③のLong ▲だけが赤い線の下に取り残された格好です。過去チャートを後から見ると「下落レッグの中で買っている」ように見えますが、出た時点では緑のレッグへの押し目でした。

Bitcoin週足のStructure-Anchored VWAP。起点が確定すると前のレッグで出たShort ▼が緑のVWAPの上に残る。
Bitcoin週足のStructure-Anchored VWAP。起点が確定すると前のレッグで出たShort ▼が緑のVWAPの上に残る。

Bitcoinの週足でも同じ現象が見られました。2022年の安値をHLとして起点にした緑のレッグの中に、その前の赤いレッグで出たShort ▼が2つ並んでいます。日足でも、2025年2〜3月の赤いレッグの中にLong ▲が残っていました。

変わるもの・変わらないもの

表示確定後に変わるか補足
Long ▲/Short ▼変わらない足の確定時に決まり、後から消えない
SL・TPライン、アラート変わらない判定も通知も足の確定時
HH・HL・LH・LLのラベル後から付く右側の本数ぶん遅れて、過去の足に付く
VWAPの曲線と帯描き直される新しい起点が確定すると、前のレッグを起点で切り、新しいレッグを起点から描く
形成中の足のVWAP値動く確定するまでは値が更新される

つまりシグナル自体は描き換わりません。一方で、曲線の色や位置は過去にさかのぼって変わります。シグナルとVWAPの関係を過去チャートで検証すると、実際より成績が悪く見えたり、逆に良く見えたりする点に注意してください。

過去の動きを確かめるならバーリプレイ

チャートをスクロールして過去を見るだけでは、確定前の画面は再現されません。TradingViewのバーリプレイを使うと、1本ずつ足を進めながら、起点が確定してVWAPが描き直される瞬間を確認できます。ただし手動で進める必要があり、日中足で遡れる期間はプランと時間足によって違います(日足以上は全プランで全期間、2026/10/1 時点の公式ヘルプより)。

起点の決め方は4種類。遅れとダマシのバランスで選ぶ

Re-anchor onで、レッグを切り替えるタイミングを選べます。描き直しの遅れが気になる方は、ここを変えるのが一番の近道です。

モードレッグが切り替わる条件起点向いている使い方
Swing(初期値)スイングの高値・安値が確定したとき確定したスイング大きな波を追う。遅れは右側の本数ぶん
Structure break終値が直前のスイングを抜けたとき(BOS)抜ける前の最安値・最高値レッグが減り、形がはっきりした転換だけを拾う
Fast直近N本の最高値・最安値が、前回と逆側に出たときひとつ前の極値確定待ちなしで反応したい短期売買
Manual指定した日時指定した日時の足標準のアンカードVWAPと同じ1本だけ引く

Fastは確定を待たないぶん反応が速いものの、Fast mode: extreme lookback (bars)(初期値30)が小さいとレッグが頻繁に入れ替わります。Fastでも起点はひとつ前の極値なので、曲線が過去の足から描かれる点は同じです。Structure breakは終値でのブレイクを待つため、Swingよりもさらに切り替わりが遅くなる場面があります。

Manualは1本だけのアンカードVWAPになり、ほかのモードの自動切り替えは行われません。TradingView標準のアンカードVWAP(描画ツール)と見比べたい場合は、Manualにして同じ日時を指定し、Price sourceを標準ツール側のソース設定と合わせ、WeightingをCumulative、出来高の上限処理をオフにしてください。

設定項目と、時間足ごとの合わせ方

設定画面は9つのグループに分かれていますが、表示に大きく関わるのは前半の4グループです。初期値はすべて設定画面と同じ値で記載しています。

Main Settings(レッグの判定)

設定初期値推奨値効果
Pivot strength left / right55 / 55時間足に合わせて調整スイングとみなす左右の本数。rightはそのまま確定の遅れになる
Minimum swing size (x ATR)1.51.5前回の逆側のスイングからATRの何倍離れたら採用するか。0でオフ
ATR Length1310〜20上のフィルターとEQH・EQL判定に使うATRの期間
Re-anchor onSwing用途で選ぶSwing/Structure break/Fast/Manual
Fast mode: extreme lookback (bars)3020〜50Fastモードで極値を探す本数
Equal high/low tolerance (x ATR)0.10.05〜0.25この幅以内ならEQH・EQLと表示
Manual anchor (date & time)2026-09-01 00:00 UTC任意Manualモードの起点。チャートのタイムゾーンで表示される

Anchored VWAP(計算方法)

設定初期値推奨値効果
Price sourcehl2hl2VWAPの計算に使う価格。hlc3は終値の比重が上がり、closeは最も敏感
WeightingCumulativeCumulativeHalf-lifeにすると古い足の重みが減り、厳密なVWAPではなくなる
Half-life (bars)21用途次第Half-lifeのとき、何本で重みが半分になるか
Clamp volume spikes at / x medianオン / 4.0オン / 4.0直近50本の出来高中央値の4倍を上限に抑え、1本の大商いに引っ張られにくくする
Max leg length (bars)40004000これより長いレッグは起点を1本ずつ前へ進める

Deviation Bands・Signals & Levels(帯とシグナル)

設定初期値推奨値効果
Band 1 / Sigmaオン / 0.5オン / 0.5内側の帯。0.5σはレッグの中心的な価格帯の目安
Band 2 / Sigmaオフ / 2.0必要に応じてオン外側の帯。非表示でもZoneの判定には使われる
Fill transparency9090帯の塗りの透明度
Bars away before a retest counts55〜10リテストの前に離れていなければならない本数
Touch tolerance (x sigma)0.250.25VWAPに触れたとみなす幅
VWAP memory levels / Max memory levelsオン / 4オン / 4終わったレッグのVWAP値を破線で残す本数
Keep crossed levels (dotted)オフ好みでオンなら触れた後も点線で残す

Risk Management(損切り・利確)

設定初期値推奨値効果
Risk PresetBalancedBalancedConservative 2.5/1R・2R・4R、Balanced 1.5/1R・2R・3R、Aggressive 1.0/1.5R・2.5R・4R、Scalping 0.8/0.8R・1.5R・2R(SLのATR倍率/TP1〜3)
ATR Length (SL)1313〜14損切り幅に使うATRの期間
SL ×ATR (Custom) ほか1.5 / 1.0 / 2.0 / 3.0CustomのときだけRisk PresetをCustomにしたときの倍率
Break-Even After TP1オンオンTP1到達で損切りを建値へ移す

Visual・Dashboard・Alerts・Colorsのグループでは、ラベルや表の表示切り替え、表の位置、アラートの種類、色を変えられます。チャートが混み合うときは、Show Dashboardの各セクションを絞るか、Finished legs kept on chart(初期値30)を減らすと見やすくなります。

時間足ごとの目安

調整の中心はPivot strength leftとrightです。rightの本数がそのまま確定の遅れになるので、時間足に換算して考えると決めやすくなります。初期値55本の場合、5分足で約4時間半、1時間足で約2日と7時間、日足なら55日です。

時間足の例左右の目安理由
1分〜5分足5 / 5〜10 / 1055本だと数時間遅れ、デイトレードの判断に間に合わない
15分〜1時間足20 / 20前後半日〜1日程度の遅れに収まり、日中の波を拾える
4時間足〜日足55 / 55(初期値)数週間単位の大きな波だけを残し、レッグを長く保つ

この目安はrightの説明欄にある「5/5 スキャルピング、20/20 デイトレード、55/55 大きなスイング」と同じ考え方で、私が試した範囲でも妥当でした。値を下げるとレッグが増え、Long ▲/Short ▼も増えます。ダマシが増えたと感じたら、Minimum swing size (x ATR)を2.0〜3.0に上げるか、Bars away before a retest countsを増やして間引いてください。

Bitcoinの4つの時間足で動かしてみた

初期設定のまま、Bitcoinの週足・日足・1時間足・5分足に表示し、ダッシュボードの成績欄を読みました(2026/9/28 時点で読み込まれていた範囲の集計です)。

時間足TradesW / LWin rate
週足21 / 150%
日足3921 / 18約53.8%(表示が一部隠れていたためW / Lから計算)
1時間足7537 / 3849.3%
5分足6935 / 3450.7%

どの時間足もおおむね5割前後でした。先ほど書いたとおり、ここでの勝ちは「TP1に触れた」だけで数えられています。つまり半分ほどのトレードは、1R進む前に損切りに届いたということです。このインジケーター単体でシグナルを全部取る使い方では、手放しで勝てるとは言えません。

ただし、この集計は読み込み直しや設定変更でリセットされ、バックテストではありません。ストラテジーテスターで検証したい場合は、売買ルールをストラテジーとして別に用意する必要があります。

5分足のもみ合いではStructure-Anchored VWAPのシグナルが増えやすい。Bitcoin 5分足、初期設定。
5分足のもみ合いではStructure-Anchored VWAPのシグナルが増えやすい。Bitcoin 5分足、初期設定。

5分足を見ると、方向感のないもみ合いでレッグが短く入れ替わり、シグナルが交互に並んでいました。初期値の55/55は5分足では長すぎる一方、短くするとこうしたもみ合いでのシグナルがさらに増えます。私は5分足では単体で使わず、上位足のレッグの向きと合わせて確認する前提にしています。

合う相場と、合わない相場

頼れるところ

  • スイングごとにVWAPを自動で引き直すので、起点を手で動かす手間がない
  • 帯がそのレッグの出来高から計算されるため、「この波にしては伸びすぎか」を銘柄の違いに関係なく比べやすい
  • トレンドがはっきりした相場では、押し目・戻りの位置が分かりやすい
  • エントリー・損切り・利確がセットで表示され、確定足だけで判定される
  • メモリーレベルで、過去の波の平均コストを節目として残せる

気をつけるところ

  • 起点が確定するまで前のレッグが続き、確定後にVWAPがさかのぼって描き直される
  • 過去チャートでは、シグナルと曲線の色が食い違って見える箇所がある
  • もみ合いではレッグが短く入れ替わり、シグナルが増えてダマシも増える
  • Win rateはTP1に触れた時点で勝ちと数えるため、実際の損益より良く見えやすい
  • 表示要素が多く、初期設定のままだとチャートが混み合う

得意なのは、日足や4時間足で一方向に進んでいる相場です。押し目がレッグのVWAP付近で止まりやすい局面では、Long ▲の位置と損切りの置き場所が一目で分かります。金先物のように出来高がはっきり記録される銘柄なら、出来高の重み付けも意味を持ちます。

苦手なのは、高値と安値が切り下がったり切り上がったりを短く繰り返す相場です。スイングが確定するころには相場がもう逆へ動いていて、前のレッグのリテストシグナルが遅れて出る形になりがちです。

DMIで向きを確かめると、確定待ちの弱点を補える

前のレッグが生きている間に出るシグナルをどう扱うか。私が一番相性が良いと感じたのは、TradingView標準のDMI(方向性指数)との併用です。+DIと−DIは直近の高値・安値の更新度合いから計算されるので、スイングの確定を待たずに向きの変化を示してくれます。

DMIで向きを確かめてからシグナルを拾う

レッグの切り替わりが遅れる弱点を、+DIと−DIの上下関係で補います。

DMIで向きを確かめてからシグナルを拾うSA-VWAPのLongシグナルを、DMIの+DIが−DIより上にあるときだけ採用する組み合わせ例。DMI(14, 14)Long ▲Long ▲Short ▼LHLLLHLLLHHL下落途中に出たLong ▲−DIが+DIより上。向きが逆なので見送る上昇レッグのLong ▲+DIが上。向きがそろうので採用

Vowars DE ver.3.12.24

上段はSA-VWAP(Pivot strength 10/10)、下段はTradingView標準のDMI(初期値)。ADXは赤、+DIは青、−DIはオレンジです。

図の①のLong ▲は、緑のレッグへの押しとして条件どおりに出たものです。ところが下段のDMIでは−DI(オレンジ)が+DI(青)を上回っていて、短期の向きはすでに下でした。このように向きが食い違うシグナルは見送ります。図の②のLong ▲では+DIが上にあり、レッグの向きとそろっているので採用、という使い分けです。

  1. Long ▲は+DIが−DIより上のときだけ採用する
  2. Short ▼は−DIが+DIより上のときだけ採用する
  3. ADXが低く横ばいのときは、レッグが入れ替わりやすい相場と見て様子を見る

ただし、図の中央にあるShort ▼のように、DMIでは向きがそろっていても直後に安値が確定してレッグが反転するケースは残ります。DMIは「明らかに向きが逆のシグナルを減らす」ためのフィルターで、すべてのダマシを消すものではありません。

アラートは1つ作れば、設定で中身を選べる

「Structure-Anchored VWAP」の通知は、TradingViewのアラート作成画面で条件にこのインジケーターを選び、「Any alert() function call」を指定すると受け取れます(TradingView公式ヘルプより)。通知の種類はアラート画面ではなく、インジケーターの設定画面のAlertsグループで切り替えます。

通知の種類初期設定切り替える項目
Long/Shortのエントリー(価格・VWAP・SL・TP1〜3・R:R付き)オンなし(常に送られる)
損切り到達(建値決済はBE STOP-OUTと表示)オンAlert on SL Hit
TP1〜3到達、建値への移動オフAlert on TP / Break-Even
新しいレッグの開始、終値でのVWAP越えオフAlert on New Leg / VWAP Cross

どの通知も足の確定時に1回だけ送られます。Webhook JSON Formatをオンにすると、エントリー通知がJSON形式になり、外部の自動売買サービスへ渡しやすくなります。アラートは作成した時点の設定で動き続けるので、設定を変えたあとはアラートを削除して作り直してください。

「波の平均コスト」として読むと、このインジケーターは手放せなくなる

「Structure-Anchored VWAP」の中心にあるのは、スイングに合わせて自動で引き直されるアンカードVWAPです。今の波に乗った人たちの平均コストがどこにあり、価格がそこからどれだけ離れているかを、σという共通の物差しで確認できます。この部分は、手作業でアンカードVWAPを引き直していた人ほど便利さを実感できると思います。

一方で、Long ▲/Short ▼とWin rateは、表示の仕組みを理解したうえで読むのが前提です。起点の確定にはrightの本数ぶんの遅れがあり、確定するとVWAPはさかのぼって描き直されます。シグナルはその時点の正しい判定でも、後から見ると逆の色の曲線に囲まれていることがあります。

使い始める前に押さえたい3つのこと

1つ目は、Pivot strength leftとrightを時間足に合わせて下げること。2つ目は、過去チャートの見た目ではなくバーリプレイで挙動を確かめること。3つ目は、DMIなどで向きをそろえてからシグナルを使うこと。この3つを守るだけで、「Structure-Anchored VWAP」の読み違いはかなり減らせます。

個人的には、まず上位足でレッグとVWAPの位置を確認し、下位足でリテストを待つ、という使い方が一番しっくりきました。シグナルを全部追いかけるより、「今どの波の、どのあたりにいるか」を知るための地図として置いておくと、「Structure-Anchored VWAP」の良さがいちばん生きると感じています。

参照元・データ出典:この記事は、チャートプラットフォーム「TradingView」にて、クリエイター「WillyAlgoTrader」が制作したインジケーターを実際に使用し、徹底分析を行った上で公開しています。

免責事項:本記事は情報提供を目的としたもので、投資助言や特定の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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YUZURU
執筆者YUZURUトレーダー / インジケーター開発者 / Webクリエイター
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Web制作会社でオウンドメディアの編集者として働きながら、2018年に暗号資産(仮想通貨)トレードを開始。現物から先物まで実践するうちにチャート分析にのめり込み、現在はTradingViewのオリジナルインジケーターも自作しています。 当サイトでは、TradingViewのインジケーターを自分のチャートで1本ずつ検証し、計算の中身・使い方・弱点までを図解つきでレビューしています。作り手の視点でロジックまで踏み込み、実際に使って確かめた情報だけを掲載。特定銘柄への投資勧誘は行っていません。

このインジケーターの製作者