Coppock Curve Multi-Filter
1962年に発表されたコポック・カーブ(Coppock Curve)は、もともと月足で株式市場の大底を拾うためだけに作られた、長期投資家向けの指標でした。買いシグナルはゼロラインの上抜けだけ。売りシグナルは存在しません。その古典を土台にしながら、実際にチャートへ入れてみるとまったく別の使い勝手になっていたのが、今回取り上げる「Coppock Curve Multi-Filter」です。

何が違うのか。シグナルの基準が「ゼロラインを抜けたか」ではなくカーブの向きが変わった瞬間に置き換わっていて、しかもそのシグナルが出た瞬間に、損切りラインと3段階の利確ラインが価格チャートへ自動で引かれます。長期の相場観測ツールが、そのままトレードプランを提示するツールに作り替えられているわけです。この記事では「Coppock Curve Multi-Filter」を実際に動かしながら、どこが便利で、どこに落とし穴があるのかを見ていきます。
月足の大底拾いが、方向転換を拾う指標に置き換わっています
まず土台の話から。「Coppock Curve Multi-Filter」の中心にある波は、長い期間の変化率と短い期間の変化率を足し合わせ、それを加重移動平均でならしたものです。ここでいう変化率は、今の価格が「N本前の価格から何パーセント動いたか」を表す数字のこと。テクニカルの世界ではROC(Rate of Change)と呼ばれます。
初期値はLong ROC Lengthが14、Short ROC Lengthが11、それをならすWMA Smoothing Lengthが10。この14・11・10という組み合わせは、コポック・カーブが1962年に提示した数字そのままです。ただし本家はこれを月足で使うことを前提にしていました。14か月と11か月の変化率を10か月でならすので、見ているのは1年以上のスパンです。
14・11・10という初期値は月足で使うことを想定して決められた数字です。日足に入れれば約2〜3週間、1時間足に入れればほぼ半日分の勢いを見ていることになります。同じ設定でも時間足によって「見ている時間の長さ」がまるで変わる点は、最初に押さえておくと設定で迷いません。
そのうえで、本家との決定的な違いがシグナルの定義です。本家はゼロラインの上抜けだけを買いシグナルにしていました。「Coppock Curve Multi-Filter」がメインシグナルにしているのは、カーブが下向きから上向きに転じた最初の1本(強気クロス)と、上向きから下向きに転じた最初の1本(弱気クロス)です。ゼロラインの位置は関係ありません。
この違いは体感としてかなり大きく出ます。ゼロライン抜けは日足でも数か月に一度あるかないかですが、カーブの方向転換は波の山と谷ごとに発生します。つまり、同じ指標でも本家より圧倒的にシグナルの数が多い。ここを理解しないまま初期設定で使うと「シグナルが出まくって使い物にならない」という印象になりがちです。
チャートに何が出るのか、4つのパーツに分けて見ていきます
「Coppock Curve Multi-Filter」は表示要素が多いインジケーターです。別ペインに出るものと、価格チャートに直接乗るものが混在しているので、パーツごとに整理します。
ペイン側の主役はラインではなく「柱」

下段のペインには、ゼロラインを挟んで上下に伸びる柱(ヒストグラム)が並びます。この柱の色が4段階に分かれているのが、この指標の見どころのひとつです。
| 柱の色 | 状態 | 読み方 |
|---|---|---|
| 濃いグリーン | ゼロより上 かつ 上昇中 | 上向きの勢いが乗っている局面 |
| 薄いグリーン | ゼロより上 だが 上昇していない | プラス圏だが勢いが鈍り始めた局面 |
| 薄いピンク | ゼロより下 だが 上昇中 | マイナス圏だが底打ちの気配が出た局面 |
| 濃いレッド | ゼロより下 かつ 下降中 | 下向きの勢いが強い局面 |
ゼロを跨いだ瞬間には、ペインの中に小さな三角マーカーも打たれます。上抜けなら上向きの三角、下抜けなら下向きの三角。これはShow Zero-Cross Markersでオンオフできます。
実際に触ってみると、ペインの中に描かれているのは柱のほうで、Coppockのライン自体はステータスラインや価格スケール側の数値として出る扱いになっています。そのためShow Histogramをオフにすると、ペインからほぼ何も見えなくなります。ゼロラインと三角マーカーだけが残る状態です。「ラインだけスッキリ見たい」と思ってオフにすると逆効果になるので、ここは注意してください。
ローソク足そのものが色分けされます

Use Candle Coloringが初期状態でオンになっているため、価格チャートのローソク足も同じ4段階のカラーリングで塗り替えられます。これがなかなか気に入っていて、ペインを見なくてもチャートを横にスクロールするだけで「どこで勢いが強かったか」が一望できます。
ゴールド(XAUUSD)の日足のように、トレンドが出ると素直に伸びる銘柄で試すと分かりやすいと思います。上昇局面が濃いグリーンでベタ塗りになり、天井圏に近づくと薄いグリーンが混ざり始める。この「濃い色が薄くなり始める」タイミングが、勢いの鈍化を目で捉えるサインになります。
ただし色が濃淡2段階しかないので、レンジ相場では濃淡が数本おきに入れ替わってチカチカします。もともとのローソク足の陰陽が見えなくなるのが気になる場合は、オフにしてしまって構いません。
シグナルが出た瞬間に、トレードプランが5本のラインで描かれます
ここが「Coppock Curve Multi-Filter」の一番の売りだと思います。強気クロスまたは弱気クロスが確定すると、価格チャートに次の5本が自動で引かれます。
- エントリーライン(青い破線)— シグナルが確定した足の終値
- 損切りライン(赤い実線)— エントリーからATRの1.5倍離れた位置
- TP1(薄いグリーンの破線)— 損切り幅の1.0倍を利益方向に伸ばした位置
- TP2(グリーンの破線)— 同2.0倍
- TP3(濃いグリーンの破線)— 同3.0倍
ATR(Average True Range)は、直近の価格がどれくらいの幅で動いているかを表す平均値です。ここを基準に損切りを置くので、ボラティリティが高い時期は自動的に損切り幅が広がり、静かな時期は狭まります。固定pipsで置くやり方と比べて、銘柄をまたいでも設定を変えずに済むのが便利なところ。ビットコインの日足でも、ゴールドの4時間足でも、同じSL ATR Multipleで運用できます。
5本のラインがどう並ぶのか、実際の位置関係を図にしました。
損切り幅を1Rとして、利確が1R・2R・3Rで並ぶ
シグナルが出た足の終値がエントリー。そこからATRの1.5倍下が損切りで、この幅を1Rとして利確が3段階に並びます。
Vowars DE ver.3.8.0
損切りラインとエントリーラインの間は薄い赤で、エントリーラインとTP3の間は薄い緑で塗られます。この2つの帯の面積を見比べるだけで、そのトレードのリスクリワードが視覚的に掴めます。ラベルには価格だけでなく、エントリーからの変動率も表示されます。
価格がTP1〜TP3や損切りラインに実際にタッチすると、そのラベルの文字が「HIT」表示と実現した変動率に切り替わります。今動いているトレードがどこまで伸びたのかを、いちいち価格を測らずに確認できるのが地味に助かります。ただし表示されるのは最新のシグナル1組だけで、次のシグナルが出ると前のラインとラベルは消えます。過去のシグナルの結果を確かめたい場合は、バーリプレイで1本ずつ進めれば、その時点のプランが順に表示されます。
ダッシュボードで現在の状態をまとめて確認できます
画像チャートの隅に置かれる表には、シンボルと時間足、ロック状態、Coppockの数値、現在のバイアス(BULLISH/BEARISH/NEUTRAL)、長短それぞれのROCの値、ゼロラインの上下、そしてエントリーからTP3までの価格が並びます。ADXフィルタを有効にしていればADXの現在値と合否の色も、平滑化を選んでいればその名前も追加されます。
表示位置はPositionで6箇所から選べます。行数が最大で14行になるので、スマホや小さいウィンドウで見ると視界をかなり占領します。個人的には、複数のインジケーターを併用しているチャートでは邪魔に感じたので、必要なときだけオンにする使い方に落ち着きました。
シグナルは2種類。役割がはっきり分かれています
「Coppock Curve Multi-Filter」が出すシグナルは、性格の異なる2系統に分かれています。ここを混同すると使い方を間違えるので、丁寧に見ておきます。
1転換クロス(メインシグナル)
カーブが1本前の値を上抜けた瞬間が強気クロス、下抜けた瞬間が弱気クロスです。トレードレベルの描画もWebhookアラートも、こちらのクロスが起点になります。反応が早い代わりに数が多く、レンジ相場では往復ビンタになりやすい性質を持っています。
2ゼロラインクロス(環境認識用)
カーブがゼロを跨いだときに発生します。三角マーカーが出るだけでトレードレベルは引かれません。本家コポックの流儀に近いのはこちら。ゼロより上は中期的な勢いがプラス圏、下はマイナス圏という相場の地合いを示すスイッチとして使うのが妥当だと思います。
この2つがどれくらいズレるのか、実際の並びを図にしてみました。柱の色が濃い赤から薄いピンクに変わった足が転換クロス、そのあとに三角が出るのがゼロクロスです。
柱の色が変わった足と、ゼロを跨いだ足はズレる
メインの転換クロスは、柱の色が濃いほうから薄いほうへ変わった足に出ます。ゼロラインの上抜けはそのあとです。
Vowars DE ver.3.8.0
私が試して手応えがあったのは、この2つを重ねる使い方です。ゼロラインより上にいる状態で発生した強気クロスだけを拾う、逆にゼロより下では弱気クロスだけを拾う。地合いに沿った方向のシグナルだけに絞ることで、レンジでの無駄なシグナルがかなり減ります。ダッシュボードの「Zero Cross」行にABOVE/BELOWが出ているので、確認の手間もありません。
「Coppock Curve Multi-Filter」は7つあるフィルタが初期状態ですべてオフになっています。つまり何の絞り込みもかかっていない状態が初期値です。そのまま日足に入れると、カーブの小さな揺れひとつひとつがシグナルになります。まずはADXフィルタだけでもオンにしてから評価を始めることをおすすめします。
フィルタは7つ。どこに効くかが分かれているのがポイント
ここが「Coppock Curve Multi-Filter」の名前の由来であり、同時にいちばん誤解されやすい部分でもあります。7つのフィルタはそれぞれ効く先が違います。全部が全シグナルに効くわけではありません。実際に一つずつオンオフしながら確認した対応関係が下の表です。
| フィルタ | 転換クロス | ゼロクロス | ダッシュボードのバイアス |
|---|---|---|---|
| ADX Filter | 効く | 効く | 効く |
| Divergence Filter | 効く | 効かない | 効かない |
| Slope Acceleration Filter | 効く | 効かない | 効かない |
| Volume Confirmation Filter | 効く | 効かない | 効かない |
| HTF Alignment Filter | 効く | 効かない | 効かない |
| Signal Persistence Filter | 効く | 効かない | 効かない |
| Volatility-Adjusted Zero Line | 効かない | 効く | 効かない |
この表が示すのは、ゼロラインクロスを絞りたいならADXとボラティリティ調整の2つしか手段がないということ。逆に転換クロスには6つも絞り込みが効きます。ヒストグラムやローソク足の色にはどのフィルタも効かないので、色は常に生の値で塗られます。
ADXフィルタ ― 最初にオンにすべき一枚
ADXは「トレンドの強さ」を方向とは無関係に0から100くらいの範囲で測る指標です。数値が高いほど一方向に動いている、低いほど方向感がない。Use ADX Filterをオンにすると、ADXがADX Threshold(初期値20)を超えているときにしかシグナルが通らなくなります。
もみ合いで発生する細かいクロスをまとめて落とせるので、費用対効果がいちばん高いフィルタだと感じました。ADXが基準に届かないときはダッシュボードのバイアスがNEUTRALに変わるので、「今は待つ場面だ」と一目で分かるのも良いところです。閾値20は一般的に「トレンドが出始めたライン」とされる数字で、まずはここから。シグナルが多いと感じたら25、逆に少なすぎると感じたら15前後まで下げる調整が効きます。
Adaptive Filter ― カーブの性格そのものを変える下ごしらえ
これはシグナルを絞る仕組みではなく、ROCを計算する前の価格を加工する仕組みです。生の終値をそのままROCに渡すか、いったん均してから渡すかを選べます。初期値はNoneで、加工なし。選べるのは8種類です。
| 選択肢 | 性格 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| SMA | もっとも素直に均す。反応は遅い | ノイズを最優先で減らしたいとき |
| EMA | 直近を重く見るので中庸 | 迷ったらここから |
| RMA | EMAよりさらに緩やか | 長めのスイングを見たいとき |
| Double WMA | 加重平均を2回通すぶん滑らかで、反応は遅くなる | シグナルを大幅に減らしたいとき |
| Triple VWMA | 出来高加重を3回。もっとも重い | 出来高が信頼できる銘柄の長期観測 |
| HMA | 滑らかさを保ちつつ遅れを抑える | 反応と安定のバランス重視 |
| LLAMA | 平均に直近の傾きを足して先へ伸ばす | 転換を早く掴みたいとき |
| Kalman Filter | 推定のブレ具合に応じて反応度を自動調整 | 同じ期間設定でも速さが欲しいとき |
実際に切り替えて重ねてみると、Adaptive Filter Lengthを同じ20にしても、Kalman FilterはEMAよりはっきり速く反応します。逆にTriple VWMAは別物と言っていいほど鈍く、日足でシグナルが月に1〜2回まで減りました。
この2つは遅れを減らすタイプではなく、遅れを増やして滑らかさを取るタイプです。平均を重ねがけしているので、反応は確実に鈍くなります。「シグナルが少なくなる代わりに大きな波だけ拾う」という方向の選択肢だと理解しておくと、期待とのズレが起きません。またTriple VWMAは出来高を使うため、出来高データが取得できない銘柄では意図した通りに働かない可能性があります。FXで使う場合は表示を確認してから採用してください。
残り5つのフィルタ、それぞれの効き方
Use Divergence Filterは、価格とカーブの動きが食い違っている状態を検出して、その逆方向のシグナルを止めます。価格が安値を切り下げているのにカーブが切り上がっていれば強気ダイバージェンス、その状態では売りシグナルが通らなくなる、という具合です。判定に使う山谷はDivergence Pivot Lookback(初期値5)で決まりますが、山谷は左右5本ずつ確定して初めて成立するため、検出そのものに5本分の遅れがあります。
Use Slope Acceleration Filterは、カーブの傾きが「プラスであること」ではなく「前より急になっていること」を要求します。転換したての勢いが弱いシグナルを落とす役割で、オンにするとシグナル数が目に見えて減ります。
Use Volume Confirmation Filterは、その足の出来高がVolume MA Length(初期値20)の平均を上回っているときだけシグナルを通します。暗号資産や個別株では機能しますが、出来高の質が銘柄ごとに違うFXでは慎重に。
Use HTF Alignment Filterは、上位足のCoppockが同じ方向を向いているかを確認します。初期値のHTF Alignment Timeframeは240分。使っている足の4〜6倍あたりを目安に合わせるのが自然だと思います。日足で使うなら240分は下位足になってしまうので、週足に変える必要があります。
Use Signal Persistence Filterは、転換する前に一定本数以上つづけて同じ方向に動いていたことを条件にします。初期値のPersistence Barsは2。つまり2本以上下げ続けてから上向きに転じたクロスだけを買いシグナルとして扱います。1本だけ下げてすぐ戻すようなヒゲ的な転換を落とせます。
Use Volatility-Adjusted Zero Lineだけはゼロクロス専用です。カーブ自体のばらつきから求めたノイズ幅を用意して、ゼロを跨いだ値がその幅を超えていなければシグナルとして認めません。ゼロライン付近を何度も行ったり来たりする局面で効きます。Volatility Zero Band Multipleを0.5から1.0に上げると、より大きく抜けたときだけ通るようになります。
フィルタを一つ足すだけで、残るシグナルの数がどれくらい変わるのか。持続の条件(Persistence Bars を2)だけを追加した場合を図にしました。
フィルタを足すと転換クロスはここまで減る
初期設定はフィルタが全部オフです。方向感のない区間では、柱がわずかに向きを変えるたびにシグナルが出ます。
Vowars DE ver.3.8.0
設定項目と初期値をまとめて確認
コア設定
| パラメーター | 初期値 | 推奨値 | 効果 |
|---|---|---|---|
| Source | close | close または hlc3 | 計算の元になる価格。ヒゲの影響を薄めたいならhlc3にすると波が少し滑らかになります |
| Long ROC Length | 14 | 14(ノイズ低減なら20〜25) | 長期側の変化率の期間。伸ばすと波が大きくゆったりになり、シグナルが減ります |
| Short ROC Length | 11 | 11 | 短期側の変化率の期間。長期側との比率が本家の設計なので、動かすなら長期側と一緒に比率を保つのが無難です |
| WMA Smoothing Length | 10 | 10〜20 | 合成した変化率をならす期間。伸ばすほどカーブが滑らかになり、転換クロスの回数が減ります |
フィルタ
| パラメーター | 初期値 | 推奨値 | 効果 |
|---|---|---|---|
| Use ADX Filter | オフ | オン | 方向感のない局面のシグナルを止めます。初期状態がオフなので、最初に触るならここです |
| ADX Threshold | 20.0 | 20〜25 | 上げるほど強いトレンドでしかシグナルが出なくなります。20はトレンド発生の一般的な目安 |
| ADX Length | 14 | 14 | ADXの計算期間。14は考案者ワイルダーの標準値で、動かす理由は少ないと思います |
| Adaptive Filter | None | None または EMA | ROC計算前の平滑化方法。Noneが本家の挙動なので、まずNoneで基準を掴んでから変えるのが分かりやすいです |
| Adaptive Filter Length | 20 | 10〜20 | 平滑化の期間。長くするほどカーブが鈍り、短期の値動きに反応しなくなります |
| Use Divergence Filter | オフ | オフ(逆張りを避けたいならオン) | 価格とカーブの食い違いに逆らうシグナルを止めます。判定に数本の遅れがある点に留意 |
| Divergence Pivot Lookback | 5 | 5〜8 | 山谷を判定する左右の本数。大きくするほど大きな山谷だけを見ますが、確定の遅れも増えます |
| Use Slope Acceleration Filter | オフ | オン(シグナルを絞りたい場合) | 傾きが加速しているときだけ通します。ダマシは減りますが、初動を取り逃す場面も増えます |
| Use Volume Confirmation Filter | オフ | 暗号資産・株ならオン | 出来高が平均を上回る足だけ通します。出来高が信頼できない銘柄ではオフ推奨 |
| Volume MA Length | 20 | 20 | 出来高の平均期間。短くすると直近の盛り上がりに敏感になります |
| Use HTF Alignment Filter | オフ | 短期足で使うならオン | 上位足の方向と揃ったシグナルだけ通します。逆張りを避けたい人向け |
| HTF Alignment Timeframe | 240 | 使用足の4〜6倍 | 参照する上位足。日足以上で使う場合は必ず変更しないと、下位足を参照する形になってしまいます |
| Use Volatility-Adjusted Zero Line | オフ | オン | ゼロライン付近の往復を減らします。ゼロクロスを地合い判断に使うなら入れておきたい設定 |
| Volatility Zero Band Multiple | 0.5 | 0.5〜1.0 | ノイズ幅の倍率。上げるほど大きく抜けたゼロクロスだけを認めます |
| Volatility Zero Band Length | 20 | 20 | ノイズ幅を測る期間。短くすると直近のボラティリティに追随しやすくなります |
| Use Signal Persistence Filter | オフ | オン | 一瞬の反転をシグナルにしない仕組み。手軽にダマシを減らせるので優先度は高めです |
| Persistence Bars | 2 | 2〜3 | 転換前に必要な連続本数。3以上にするとシグナルが目に見えて減ります |
トレードツール
| パラメーター | 初期値 | 推奨値 | 効果 |
|---|---|---|---|
| Lock Signal | オフ | オフ(監視中だけオン) | 最新足での新規シグナルを止め、今表示中のトレードプランを固定します |
| SL ATR Multiple | 1.5 | 1.5〜2.5 | 損切りまでの距離。暗号資産の日足のようにヒゲが長い銘柄では2.0以上にしないと簡単に狩られます |
| TP1 R-Multiple | 1.0 | 1.0 | 損切り幅と同じ距離の利確目標。分割決済の一段目として素直な数値です |
| TP2 R-Multiple | 2.0 | 1.5〜2.0 | 二段目の利確目標。レンジ寄りの相場が多い銘柄では1.5に下げると到達率が上がります |
| TP3 R-Multiple | 3.0 | 3.0以上 | 最終目標。トレンドが伸びる銘柄では4.0や5.0に広げても届く場面があります |
| ATR Length | 14 | 14 | ボラティリティ測定の期間。短くすると直近の急変動に損切り幅が敏感になります |
| Show Trade Levels | オン | オン | 価格チャート上のライン・ラベルとダッシュボードのレベル行をまとめて表示します |
スタイル別のセッティング例
数値だけ並べても使いどころが伝わらないので、私が試して落ち着いた組み合わせを3つ挙げます。あくまで出発点として、自分の銘柄で調整してみてください。
1デイトレードで押し目・戻りを拾いたい
15分足か1時間足で、Use ADX Filterをオン、ADX Thresholdを20、Use Signal Persistence FilterをオンにしてPersistence Barsは2。さらにUse HTF Alignment Filterをオンにして、15分足ならHTF Alignment Timeframeを60か120に合わせます。上位足の方向に沿った押し目だけを拾う形になり、トレンド中の逆張りシグナルがかなり落ちます。SL ATR Multipleは1.5のままで問題ないと思います。
2スイングで大きな波の転換だけ捉えたい
日足でWMA Smoothing Lengthを14〜16に伸ばし、Adaptive FilterをEMAかHMAの14前後に設定。ADXフィルタは閾値25まで上げます。カーブが滑らかになるぶん転換クロスが減り、ひと相場に数回のシグナルに絞られました。SL ATR Multipleは2.0〜2.5、TP3 R-Multipleは4.0あたりまで広げても届く場面があります。
3地合いの確認だけに使いたい
Show Trade LevelsとShow Dashboardをオフ、Use Candle Coloringをオンにして、Use Volatility-Adjusted Zero Lineをオンにします。ローソク足の色とゼロラインの上下だけを見る、シンプルな環境認識ツールになります。他の手法のフィルタとして横に置いておく用途なら、この構成がいちばん邪魔になりません。
得意な相場と、苦手な相場
「Coppock Curve Multi-Filter」の本体はROCベースの勢い指標なので、方向が出ている相場で強く、方向感がない相場で弱いという基本性質は変わりません。
向いている場面
- トレンドが続いている中での押し目・戻りの拾い直し
- 大きく下げた後の底打ち確認(本家の想定用途に近い)
- ATRベースの損切り幅を自動で欲しいスイングトレード
- ボラティリティの高い暗号資産やゴールドなど、値幅が出る銘柄
- アラートをWebhookで外部に飛ばしたい自動化寄りの運用
苦手な場面
- 方向感のないレンジ相場(転換クロスが往復する)
- ゼロライン付近を細かく行き来する停滞局面
- 数分単位のスキャルピング(ROC14+WMA10では反応が追いつきません)
- 出来高データが乏しい銘柄での出来高フィルタ・Triple VWMA
- 窓を空けやすい銘柄(損切りラインを飛び越えることがあります)
トレードスタイルで言えば、デイトレードとスイングトレードが中心で、日足以上を使えばポジショントレードにも寄せられます。スキャルピングに使うのは設計上きびしいと思います。1分足に入れるとカーブが細かく上下して、転換クロスが数本おきに発生する状態になりました。
使う前に知っておきたい落とし穴
リペイントについて
気になる後出しの描き換えについて、確認できた範囲をまとめます。転換クロスもゼロクロスも足が確定してから成立する設計になっていて、トレードレベルのラインとラベルも確定後に描かれます。過去に遡ってシグナルが消えたり増えたりする挙動は確認できませんでした。
また損切り・利確のヒット判定は、シグナルが出た足そのものを除外して、翌足以降でのみ行われます。シグナル足の中には「エントリー価格が決まる前の値動き」が含まれているためで、この点はきちんと配慮された作りだと感じました。上位足フィルタも、参照するのは上位足の確定済みの値なので、未来の情報を先取りする形にはなっていません。
形成中のローソク足では、Coppockの数値もヒストグラムの色も足が確定するまで変動します。これはリペイントではなく、リアルタイム計算の通常の挙動です。色を根拠に判断する場合は、足の確定を待つ習慣をつけてください。
利確に到達した後もトレードプランは残ります
ここは実際に触っていて気づいた点です。TP1〜TP3に到達しても、次の反対シグナルが出るまでラインは表示されたままになります。そのためTP3に到達した後に価格が反転して損切りラインまで戻ると、TP到達と損切り到達の両方のラベルが出る状態になります。
1本のトレードとして見れば「利確済みなので損切りは無関係」なのですが、チャート上の表示だけを見ると両方が起きたように見えます。表示中のプランの結果を判断するときは、この点を差し引いて読む必要があります。
Lock Signal は最新足でのみ働きます
Lock Signalをオンにすると、今表示されているトレードプランが固定され、新しいシグナルが上書きしなくなります。ただしこれが効くのはチャートの最新足だけです。過去のバーでは通常どおりシグナルが処理されるので、オンにしても履歴の見え方は変わりません。「今のセットアップを消したくないから固定しておく」という用途に限定されます。
アラートを設定するときの手順
「Coppock Curve Multi-Filter」には2種類のアラートが用意されています。ひとつは名前付きの条件を選ぶ通常のアラート、もうひとつはWebhook向けにJSON形式のデータを送るタイプです。
1通常のアラートを使う場合
アラート作成画面で条件にインジケーターを選ぶと、Bull Cross、Bear Cross、Zero Cross Up/Down、Close Long/Short、TP1〜TP3 Hit、SL Hitという10種類が並びます。必要なものを選ぶだけです。
2Webhook用のJSONを使う場合
条件で「Any alert() function call」を選ぶ必要があります。これを選ばないとJSONのアラートは飛びません。設定画面のAlertsグループにあるaction文字列を、受け取り側のシステムが期待するキーに合わせて先に書き換えておいてください。送られるデータには銘柄、時間足、Coppock値、方向、エントリー、損切り、TP1〜TP3の価格が含まれます。
トレードレベルが自動で引かれると、それだけで完結した売買システムのように見えてしまいます。ただし「Coppock Curve Multi-Filter」が計算しているのは勢いの転換と、そこから機械的に導いた価格の目安だけです。水平線やトレンドラインなど、価格そのものの構造による裏付けは別途必要になります。過去チャートで良く見えた設定が、そのままリアルタイムで再現される保証もありません。
何と組み合わせると噛み合うか
「Coppock Curve Multi-Filter」が答えてくれるのは「今、勢いがどちらを向いているか」だけです。足りないのは価格の位置情報なので、そこを埋める道具を横に置くと使いやすくなります。
私が併用して手応えがあったのは、水平線ベースのサポート・レジスタンスです。強気クロスが出たとき、その価格が直近の抵抗帯の下なのか上なのかで、取れる値幅がまるで違ってきます。抵抗帯のすぐ下で出たシグナルは、TP1にすら届かず跳ね返されることが多い印象でした。
移動平均線を1本だけ引いておくのも有効だと思います。200日移動平均のような長期線の上下でシグナルを選別すると、ゼロラインクロスによる地合い判断と二重のフィルタになります。逆に、同じくモメンタム系のRSIやMACDを重ねるのはあまり意味がないと感じました。見ているものが近すぎて、判断材料が増えません。
出来高プロファイルとの相性も良さそうです。ボリュームが薄い価格帯で強気クロスが出れば、そこは価格が素早く通過しやすい領域なので、TP2やTP3への到達期待が上がります。
古典指標コポック・カーブを作り替えた一本としての実力は?
「Coppock Curve Multi-Filter」を一言でまとめるなら、60年前の長期指標に現代のトレード管理を接ぎ木した実験的な一本です。土台のコポック・カーブ自体はシンプルなままで、その上に7つのフィルタ、8種類の平滑化、ATRベースのトレードプラン、Webhookアラートが積み上がっています。
画像良かったのは、シグナルが出た瞬間に「どこで損切りして、どこまで伸びれば1R取れるのか」が数字で目の前に出てくること。エントリーの判断とリスク管理を同じ画面で完結させられるのは、思っていた以上に思考の節約になりました。ヒートマップのローソク足も、チャートを引いて眺めるだけで勢いの地図になるので気に入っています。
一方で、初期状態のままだとフィルタが全部オフで、シグナルが出すぎます。この指標は「入れてすぐ使う」タイプではなく、自分の銘柄と時間足に合わせてフィルタを組み立てて初めて形になるタイプです。ADXと永続性フィルタをオンにするだけでも印象が変わるので、まずはそこから始めてみてください。ヒストグラムをオフにするとペインが空になる点も、知らないと戸惑うところだと思います。
コポック・カーブという指標名に長期投資のイメージを持っている人ほど、実際の挙動とのギャップに驚くはずです。その差を理解したうえで、勢いの転換点を拾う道具として使うなら、十分にチャートの一枠を割く価値があると私は思います。




