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トークン化株式

とーくんかかぶしき

別名・略称
トークナイズド株式 株式トークン Tokenized Stocks Tokenized Equities

トークン化株式とは

トークン化株式とは、企業の株式や株式に対する経済的な権利を、ブロックチェーン上で取引可能なデジタルトークンとして表現したものです。英語では「Tokenized Stocks」や「Tokenized Equities」などと呼ばれます。

従来の株式は、証券取引所や証券会社、中央清算機関、証券保管機関など、既存の金融市場を支える仕組みの中で発行・管理・決済されます。一方、トークン化株式では、ブロックチェーンなどの分散型台帳技術を利用して、株式または株式に連動する権利をデジタルトークンとして記録します。

ただし、「株式をトークンにしたもの」だからといって、すべてのトークン化株式が法的に本物の株式そのものを表しているわけではありません。実際の商品によって、トークン保有者が株主としての権利を持つのか、株式の価格に連動する経済的な権利だけを持つのかなど、仕組みは大きく異なります。

ポイント

トークン化株式を理解するときは、「ブロックチェーン上で株式を表現している」という技術面だけでなく、そのトークンが何の権利を表しているのかを確認することが重要です。

トークン化株式の仕組み

トークン化株式では、ブロックチェーン上に株式やそれに対応する権利を表すトークンを発行します。トークンの発行・移転・償還などのルールをスマートコントラクトによって管理するケースもあります。

基本的な流れを単純化すると、次のようになります。

  1. 対象となる株式や株式に連動する資産・権利を用意する
  2. それらを裏付けとしてデジタルトークンを発行する
  3. ブロックチェーン上でトークンを保有・移転する
  4. 必要に応じて配当などの経済的利益をトークン保有者へ反映する
  5. 条件を満たせばトークンを償還し、対応する資産や権利を受け取る仕組みを設ける

もっとも、これはあくまで一般的なイメージです。実際には、発行主体、カストディアン、証券会社、取引プラットフォームなどが関係し、それぞれの商品設計によって権利関係や取引方法が異なります。

ブロックチェーンが使われる理由

ブロックチェーンは、取引履歴を一定のルールに基づいて記録し、ネットワーク上で共有できる仕組みです。トークン化株式では、この性質を利用することで、株式に関連する権利の移転や取引記録をデジタル化できます。

特に重要なのが、資産と取引記録をプログラムによって扱える点です。スマートコントラクトを利用すれば、特定の条件を満たした場合にトークンの移転や処理を自動化することも可能になります。

ただし、ブロックチェーン上の記録だけで株式の法的所有権が自動的に成立するわけではありません。どの法律が適用されるのか、誰が株式を保有しているのか、トークン保有者にどのような権利が認められているのかといった法的・制度的な部分が重要になります。

トークン化株式にはどのような種類があるのか

「トークン化株式」という言葉は一つの仕組みだけを指すものではありません。特に重要なのが、実際の株式をトークン化しているタイプと、株式価格への連動を目的としたタイプを区別することです。

実際の株式を裏付けとするタイプ

発行されたトークンに対応する株式を第三者が保管し、その株式を裏付けとしてトークンを発行する方式です。

この場合、トークンの価値を実際の株式によって裏付けることで、株価との連動を目指します。ただし、トークン保有者自身が法律上の株主として直接登録されるとは限らず、株式を保管する事業者などが名義上の保有者となる場合もあります。

株式に連動する経済的権利を提供するタイプ

株式そのものをトークン化するのではなく、特定の株式の価格変動などに連動する経済的な価値をトークンとして提供する方式もあります。

この場合、トークンを保有しているからといって、対象企業の株主になるわけではありません。議決権や株主総会への参加権など、通常の株式に付随する権利が存在しないこともあります。

株式とトークンの違いを整理する

項目従来の株式トークン化株式
記録・管理既存の証券インフラブロックチェーンなどのデジタル台帳を利用する場合がある
取引単位証券市場の制度に従う商品設計によって異なる
取引時間市場の取引時間に制約される24時間取引などを目指す商品もある
株主としての権利原則として株式に付随する商品によって異なる
決済既存の証券決済インフラブロックチェーン上で処理される場合がある

この違いは非常に重要です。「トークン化株式」という名称だけを見て、通常の株式と同じ権利が付いていると判断するのは適切ではありません。

トークン化株式の特徴

24時間取引を実現しやすい

トークン化された資産は、ブロックチェーン上で移転できるため、従来の証券取引所とは異なる取引環境を構築しやすいという特徴があります。

株式市場では通常、取引所の営業日や取引時間が決められています。一方、暗号資産市場では原則として24時間365日取引できる環境が一般的です。そのため、株式をブロックチェーン上のトークンとして扱うことで、株式市場と暗号資産市場の取引時間の違いを縮められる可能性があります。

ただし、トークン化株式が24時間取引できるかどうかは商品ごとに異なります。対象となる株式市場が閉まっている時間帯には価格形成や流動性が限定される場合もあるため、「トークン化されている=常に通常の株式と同じ条件で取引できる」と考えるべきではありません。

少額取引や分割所有との相性がよい

トークンはデジタル上で細かく分割して設計できるため、従来より小さな単位で資産へのエクスポージャーを提供できる可能性があります。

例えば、株式そのものを一株単位で売買する場合には、株価によって必要な資金が変わります。一方、トークン化によってより小さな単位を設定できれば、少額資金で特定企業の株価変動に連動する商品へアクセスできる可能性があります。

ただし、実際に分割取引が可能かどうかは、発行者やサービスのルールによって決まります。トークンだから必ず小口化されているわけではありません。

決済を効率化できる可能性がある

従来の金融市場では、取引成立後に証券の受け渡しや資金決済など複数の処理が必要になります。トークン化された資産では、ブロックチェーン上で資産と決済手段を連携させることで、こうした処理を効率化できる可能性があります。

特に、株式などの証券だけでなく、現金や預金、ステーブルコインなどもデジタル化されれば、資産と資金を同じデジタル環境で決済する仕組みを構築しやすくなります。

トークン化株式とステーブルコインの関係

トークン化株式を理解するうえでは、ステーブルコインとの関係も重要です。

ステーブルコインは、米ドルなどの法定通貨や特定の資産との価値連動を目指す暗号資産です。トークン化された株式とステーブルコインを組み合わせることで、株式のような投資対象と、デジタル化された決済手段を同じブロックチェーン上で扱える可能性があります。

例えば、トークン化された株式をステーブルコインで購入し、取引成立後にブロックチェーン上で資産と代金を移転する、といった仕組みが考えられます。

このような仕組みは、従来の金融市場と暗号資産市場を接続する「オンチェーン金融」の重要な要素の一つとして注目されています。

トークン化株式とRWA

トークン化株式は、近年注目されているRWA(Real World Assets)とも深く関係しています。

RWAとは、現実世界に存在する資産をブロックチェーン上でトークン化して扱う考え方です。対象には、国債、不動産、社債、ファンドなどさまざまな資産が含まれます。

株式も現実世界に存在する金融資産であるため、トークン化株式はRWAの代表的な分野の一つと考えられます。

概念意味
RWA現実世界の資産をブロックチェーン上で扱う考え方
トークン化資産や権利をデジタルトークンとして表現すること
トークン化株式株式または株式に関連する権利をトークン化したもの
ステーブルコイン法定通貨などとの価値連動を目指すデジタル資産

トークン化株式のメリット

取引インフラをデジタル化できる

トークン化株式では、資産の保有や移転、取引記録などをブロックチェーン上で処理できる可能性があります。これにより、従来の証券市場とは異なる金融インフラを構築できる余地があります。

国境を越えた金融取引との相性がよい

ブロックチェーンはインターネットを通じて利用できるため、国境を越えた資産移転との相性がよいという特徴があります。

ただし、金融商品には国ごとに異なる法律や規制が存在します。そのため、技術的には世界中からアクセスできたとしても、実際に誰でも自由に購入できるとは限りません。

透明性を高められる可能性がある

ブロックチェーン上の取引記録を利用する場合、従来の閉じたシステムとは異なる形で取引履歴を確認できる可能性があります。

一方で、ブロックチェーンに記録されていることと、裏付け資産が本当に存在することは別問題です。「オンチェーンで確認できる」という事実だけで、商品の安全性や裏付け資産の存在が保証されるわけではありません。

トークン化株式のデメリットとリスク

法的な権利関係が複雑になりやすい

最大の注意点の一つが、トークン保有者にどのような権利があるのかという問題です。

通常の株式であれば、株主として議決権や配当を受ける権利など、法律や会社の定款などによって定められた権利があります。しかし、トークン化株式では、トークンが株式そのものなのか、株式を裏付けとした権利なのか、株価に連動する別の金融商品なのかによって扱いが変わります。

発行者や保管者の信用リスク

実物の株式を第三者が保管し、それを裏付けとしてトークンを発行する仕組みでは、トークンだけでなく、裏付け資産を管理する事業者の信用性も重要になります。

仮にトークンの価格が対象株式に連動する設計でも、裏付け資産の管理方法や償還条件に問題があれば、理論上の価値と実際に換金できる価値に差が生じる可能性があります。

流動性リスク

株式市場で広く取引されている企業の株式をトークン化したとしても、トークン自体に十分な買い手と売り手が存在するとは限りません。

このように、対象資産そのものの流動性と、トークン化された商品の流動性は別々に考える必要があります。

価格乖離のリスク

トークン化株式の価格が対象となる株式価格と完全に一致するとは限りません。

取引量が少ない場合や、対象市場とトークン市場の取引時間が異なる場合、需給関係によってトークン価格が基準となる株価から一時的に乖離することがあります。

規制変更の影響

トークン化株式は、証券規制や暗号資産規制、金融サービス規制など複数の制度と関係する可能性があります。

国や地域によって規制の考え方も異なるため、ある地域では提供可能なサービスが、別の地域では利用できない場合があります。また、制度整備が進むことで、提供条件や取引方法が変更される可能性もあります。

注意点

トークン化株式を購入する場合は、名称だけで判断せず、対象株式、裏付け資産、発行主体、保管主体、償還条件、配当の扱い、議決権の有無、利用できる地域、適用される規制などを確認する必要があります。

通常の株式との違い

トークン化株式と通常の株式は、価格が同じように動くことがあっても、必ずしも同じ金融商品ではありません。

通常の株式では、企業の株主として法的な権利を取得します。一方、トークン化株式では、トークンを保有することによって得られる権利が商品ごとに異なります。

比較項目通常の株式トークン化株式
株主権利株式に付随する権利を持つ商品設計によって異なる
保有記録既存の証券制度で管理ブロックチェーンを利用する場合がある
取引場所証券取引所など専用プラットフォームなど
取引時間市場ごとに決められる商品によって異なる
分割可能性市場制度に依存小口化できる設計も可能
決済方法既存の証券決済システムブロックチェーン上で行う場合がある

トークン化株式を見るときのポイント

投資対象としてトークン化株式を見る場合には、単純に対象企業の株価だけを確認するのでは不十分です。次のような項目を確認すると、その商品の特徴を把握しやすくなります。

  1. 何を裏付けとしているのか
  2. トークン保有者にどのような権利があるのか
  3. 対象となる株式を誰が保管しているのか
  4. 配当やその他の経済的利益がどう扱われるのか
  5. トークンをどのように売買・償還できるのか
  6. 対象株式とトークン価格がどの程度連動する設計なのか
  7. どの国や地域の利用者が取引できるのか
  8. 発行主体やサービス提供者にどのような規制が適用されるのか
  9. 取引量や流動性が十分にあるのか
  10. スマートコントラクトやブロックチェーン自体にどのようなリスクがあるのか

チャートを見る場合の注意

トークン化株式のチャートを分析するときは、対象となる通常の株式チャートと単純に同一視しないことが大切です。

例えば、米国株を裏付けとするトークンであれば、米国株式市場が開いている時間帯とトークン市場の取引時間が一致しない可能性があります。市場が閉まっている時間帯でもトークンが取引されていれば、ニュースや暗号資産市場全体の値動きによって価格が変化することがあります。

また、取引量が少ない場合には、わずかな注文でも価格が大きく動くことがあります。そのため、ローソク足だけを見るのではなく、出来高、スプレッド、板の厚さ、通常の株式価格との乖離なども確認することが重要です。

トークン化株式と株式デリバティブの違い

トークン化株式は、株式価格に連動するという点で、CFDなどのデリバティブ商品と混同されることがあります。

しかし、両者は同じものではありません。デリバティブは、株式などの原資産の価格変動をもとに価値が決まる金融契約です。一方、トークン化株式は、株式そのものや株式に関連する権利をブロックチェーン上のトークンとして表現することを目的とした仕組みです。

したがって、「株価に連動する」という一点だけでは、その商品が株式なのか、トークン化された証券なのか、デリバティブなのかを判断できません。商品の法的構造と権利関係を確認する必要があります。

トークン化株式が注目される背景

トークン化株式が注目される背景には、金融市場のデジタル化があります。

これまで金融資産は、証券、銀行預金、ファンドなど、それぞれ異なるシステムによって管理されてきました。ブロックチェーンを利用すれば、異なる種類の資産を共通のデジタル基盤上で扱える可能性があります。

さらに、ステーブルコインやデジタル通貨などの決済手段と組み合わせることで、「資産の発行」「取引」「決済」「保管」をデジタル環境の中で一体化する構想も進んでいます。

このため、トークン化株式は単なる「株式の暗号資産化」ではなく、従来の金融市場そのものをブロックチェーン技術によって再設計する動きの一部として捉えることもできます。

トークン化株式の今後を考えるうえで重要な点

今後、トークン化株式が広く普及するかどうかを考えるうえでは、技術だけでなく、規制、流動性、投資家保護、既存金融機関との接続性が重要になります。

ブロックチェーン上で株式を発行する技術自体は成立しても、投資家が安心して利用するには、裏付け資産が適切に管理され、保有者の権利が明確であり、必要なときに売買や償還ができる環境が必要です。

また、トークン化株式の市場が拡大するためには、単に商品数を増やすだけでなく、十分な取引参加者と流動性を確保することも欠かせません。

覚えておきたいポイント

トークン化株式は、「株式をブロックチェーン上で扱えるようにする」という技術的な側面と、「トークン保有者にどのような法的・経済的権利を与えるのか」という金融商品の側面を分けて考えると理解しやすくなります。

トークン化株式のまとめ

トークン化株式は、株式そのもの、または株式に関連する権利をブロックチェーン上のデジタルトークンとして表現する仕組みです。24時間取引、小口化、決済の効率化、国境を越えた取引など、従来の証券市場とは異なる可能性を持っています。

一方で、トークンを保有することで実際にどのような権利を取得できるのかは商品によって異なります。株主としての議決権や配当を受ける権利があるとは限らず、対象株式の価格に連動する経済的価値だけを提供する商品も考えられます。

そのため、トークン化株式を理解するときは、単に「ブロックチェーン上で取引できる株式」と覚えるのではなく、裏付け資産、発行主体、保管方法、保有者の権利、価格連動の仕組み、流動性、償還条件、規制まで確認することが重要です。

RWAやステーブルコインなどの普及とともに、トークン化株式は従来の証券市場とブロックチェーンを結び付ける金融商品の一つとして位置付けられています。